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日々是躍動三昧!

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毎度様です。
最近随分と『偽前史』シリーズでの更新が多いですが、単なる思い付きと衝動でそうなっているだけなので、特に意図はありません。
今回もまた単なる思い付きで偽前史としての記事を書かせていただきます。さすがにこの手の記事が何度も続いて飽きがきている人も多いでしょうけれど、仕方ないと思ってそこは諦めてください。
衝動的にどうしても書きたくなるものなのです。


前回は高速のハード・ダンス・ミュージックであるギャバーの黎明期に着目したのですが、今回はそれと対を成す高速ダンス・ミュージックである“ハッピー・ハードコア”の誕生前夜を浮き彫りにしていこうと思います。
現在このジャンルは“フリーフォーム・ハードコア”という呼称で呼ばれることが多く、トランス・シーンなどの影響で曲調もかつての様相から随分と離れたものとなっていますが、元々は90年代初頭に勃興したハードコア・テクノ・シーンの一要素だったブレイクビーツ・テクノを原点とするものです。ハードコア・テクノ自体はこのブログでも再三触れているようにベルジャン・ニュービートから派生したものですが、UKヒップ・ホップやUKレゲエのシーンが形成されつつあったイギリスに波及したことで、独自の解釈がなされてブレイクビーツ・ハウス(テクノ)の素地が築かれていきました。
特に、当時UKレイブ・シーンの筆頭格だったThe Prodigyを擁するXL Recordingsは、イギリスでのハードコア・テクノ普及に尽力したレーベルの一つで、シーンの流れを的確に掴んだ運営によりブレイクビーツ・テクノへいち早く名乗りを揚げています。


$日々是躍動三昧!-thirdchapterVarious Artists - XL Recordings :
The Third Chapter [Breakbeats House]
(1992年/ XL Recordings)
♪m-9 First Project - Right Before
♪m-11 SL2 - DJs Take Control(DJ Seduction mix)


1991~1992年頃におけるブレイクビーツ・テクノに主眼を置いたレーベル・コンピで、The Prodigyによるm-7やSL2のm-4にどうしても目が行きがちではあるが、後にPlanet Of Drumsを結成するTim Taylorによるm-9や、SL2の出世作m-11のリミックスなどで、ブレイクビート+イーブン・キックという、ハッピー・ハードコアの主軸となるリズム構造が聴き取れることにも注目したい。
決して多幸感ある曲調ではないものの、既にこの段階で萌芽が見られていたことの証左と云えるのではないだろうか。



ブレイクビートはヒップホップ由来のものですが、更に元を辿ればジャズやファンクなどのブレイク…コードがなく、リズム・セクションが前面に出た状態…をサンプリングしたものです。一番有名なブレイクビート・サンプルは、The WinstonsAmen Brotherという曲から無断に拝借されたもので(アーメン・ブレイクと呼ばれる)、これがブレイクビーツ・テクノやジャングル/ドラム&ベースでも頻繁に使い倒されています。
このようなリズムは構造上、スネア・ドラム主体の複雑な刻み方ですし、イーブン・キック・ビートと比較して拍が取りずらいので、それを解消するために同じテンポのブレイクビートとイーブン・キックを組み合わせて使うという発想が生まれたのだと推察出来ます。
この組み合わせ自体は以前からハウス・ミュージックでも散見されていましたが、ブレイクビートをより判りやすくするという意図で使われるようになったのは、ハードコア・テクノ以降だと思いますね。


$日々是躍動三昧!-djseductionDJ Seduction - Hardcore Heaven (1991年/ FFRR)
♪m-1 Hardcore Heaven (heavenly mix)
♪m-2 You And Me

後にハッピー・ハードコアのシーンで重鎮格として知られることになるJohn Kalkanが1991年に自費で発表したシングルで、やはり何と言っても他に先駆けてイーブン・キック+アーメン・ブレイクビートを実践しているm-1が秀逸。当時のハードコア・テクノでは定番と言える、ざらついたオーケストラ・ヒットをメイン・フレーズで使っているものの曲調自体は明快で、テンポを上げるだけでそのままハッピー・ハードコアとして機能する位に完成された構成となっている。
本作の影響がどれだけ大きかったかは、その後のシーンにおける曲調の傾向を見れば一目瞭然であろう。





$日々是躍動三昧!-tonedefTone Def - Big Love [remix] (1991年/ Moving Shadow)
♪m-1 Untitled
♪m-3 Big Love (remix)

テクノ色が強いジャングル/ドラム&ベース…“ハードステップ”と呼ばれた形式にいち早く取り組み、その代名詞となったレーベル、Moving Shadow初期の、確固たる方針が定まっていなかった頃にリリースされたシングル。
オーケストラヒット・フレーズを使い、当時のハードコア・テクノ的な形式そのままの派手さ極まるm-3だが、やはりここでもアーメン・ブレイクを加味したイーブンキック・ビートが聴き取れることに注目すべきであろう。この後イーブン・キックは陰を潜め、ほぼ完全にブレイクビート一辺倒のリリースとなってしまうのだが、このレーベルが間接的にハッピー・ハードコアへ与えた影響も無視出来ないものだ。






$日々是躍動三昧!-nrgN.R.G. - Feel The Fury remix (1992年/ Chill)
♪m-1 I Need Your Love (real hardcore mix)
♪m-2 Feel The Fury (piano mix)

どちらかと言うとUKハウス/ガラージ・シーンでの活動が目立つNeil Gavin Rumneyによるブレイクビート系ユニットで、本作は3rdシングルのリミックスである。ジャングルの前身的な曲調が目立つ中、多少不完全ながらもイーブンキック+ブレイクビートを使ったm-2の疾走感溢れる展開が圧巻だ。piano mixと冠する通り、随所に軽快なピアノのフレーズを使っているが、これもやはり当時のハードコア・テクノで数多く見られる傾向。
このようなピアノ・フレーズは、後のハッピーハードコアにもしっかりと受け継がれており、親しみやすさを象徴する要素の一つである。






$日々是躍動三昧!-cloud9Cloud 9 - Back To Detroit ep (1992年/ cloud9)
♪m-3 Mindbomb
♪m-4 Gonna Be Alright

後にNookieという名義でドラム&ベース作を多数リリースすることになるGavin Cheungが自費リリースしたシングルで、タイトルが示すようにどことなくデトロイト・テクノを彷彿させる叙情的なm-3も捨てがたいが、ここはやはり儚げなピアノ・フレーズが強く印象に残るm-4を推したい。この曲もまたイーブン・キック+アーメン・ブレイクを基調に、執拗に繰り返される早回しヴォーカル・サンプリングなど、プレ・ハッピー・ハードコアとしての体裁は整っている。この路線でのリリースは、同名義でMoving Shadowに移籍してからもしばらく続けていた。






$日々是躍動三昧!-yolkYolk - Sunny Side Up remix (1992年/ Ruffbeat)
♪m-1 Music 4 Da People (original)
♪m-2 Music 4 Da People (poached remix)

Ukハウス・ユニットのAngry Mexican DJsという名義のほうで有名なGareth MilfordSteve Bracewellによる、同年にリリースされていた1stシングルのリミックス。
主要作m-2は、併録されている元作m-1にイーブン・キック・ビートを加味した以外に別段目新しい要素はないが、これもまたプレ・ハッピー・ハードコア的な作の列へ加えられるものであろう。
m-1、m-2共に煌くようなアルペジオ、軽快なピアノ・フレーズに加え、叙情さと生真面目さも感じさせる、変化に富んだ曲展開が印象的なシングルだ。






$日々是躍動三昧!-jonnylJonny L - Hurt You So remix (1992年/ Yo!Yo!)
♪m-1 hurt You So (S&M mix)
♪m-2 hurt You So (deep pain mix)

後にアートコアと呼ばれるドラム&ベース・スタイルの代表となるJonny Lが、リリースの主要拠点としていたXL Recordingsに移籍する前に発表した1stシングルのリミックス版。ハッピー・ハードコア・クラシックスとしても知られている。
上記に挙げた諸作と比較して、ハッピー・ハードコアというよりもトランス寄りの曲調で、夢見心地な浮遊感溢れるストリングスが印象的。
これは後の彼が手掛けることとなるアートコア的作風とかなり通じるものがあり、既にこの時点でその片鱗は見え隠れしていたということだろう。ブレイクビート色は比較的薄め。






1990年代初頭で、既にこれだけハッピー・ハードコアの萌芽を感じることが出来る曲群があることに驚いた方も多いでしょう。このジャンルに限らず、ヨーロッパでは様々なクラブ・サウンドのスタイルが同時多発的に発生し、急激にシーンが変化していきました。
UKのテクノ・レーベルWarpが提唱したA.I(アーティフィシャル・インテリジェンス)などの影響で難解な曲調が持て囃される風潮が広まったのもこの時期で、かたやブレイクビーツ・テクノは“犬も喰わない”“頭が悪いガキが好む低俗な音楽”“レイブの質を落とした”などの汚名を次々と浴びせられる羽目になりましたがしかし、それでもこのジャンルは進化を止めませんでした。
イーブンキックを加味したブレイクビーツ・スタイルは音楽的完成度や複雑さ等の進化をジャングル/ドラム&ベースに譲り、より親しみやすさに特化した作風を模索していくことになります。




ハッピー・ハードコアの様式が固まってきたのは、1993年辺りです。黎明期のジャングルと比肩するようにテンポも上がり始め、大体の完成形を見ることが出来るようになりました。
但し、この当時はまだジャンル名はジャングルと同様に“ハードコア・テクノ”と呼ばれていましたが。
ギャバー・シーンやトランス・シーンからの影響なのか、ブレイクビートを加味しないようなスタイルも徐々に広まり始めています。



$日々是躍動三昧!-speedlimitVarious Artists - Speed Limit 140 BPM + :
The Sounds Of London Hardcore Techno

(1993年/ Moonshine)
♪m-8 Jem 77 - Forbidden Planet


サブタイトルに“London Hardcore Techno”とあるが、収録内容が殆どブレイクビーツ・テクノやジャングル黎明期の作風で統一されたシリーズ・コンピレーションの1作目。
曲調も激しさや暗さとほぼ無縁の、多幸感溢れるメロディラインを前面に展開されたもので構成されている。
さり気無く収録してあるイーブン・キック色が漂う曲群がまた、ブレイクビーツ・テクノからハッピー・ハードコアへと分岐していく過程を感じさせるものばかりで、このシリーズ2作目と併せて聴くと、ハッピー・ハードコアがどのようにして形作られていったのかを垣間見ることが出来るだろう。




このシリーズは現在までに11作を数えるほど続いていましたが、どれもブレイクビート・スタイル周辺のものに的を絞って選曲されており、勿論スタイル確立以降のハッピー・ハードコアも扱っていますので、UKレイブ・ミュージックの遍歴を追うには好材といえるコンピレーションだと思います。2作目まで副題に“London Hardcore Techno”と付いているのは、それまでこれらのジャンルに明確な名称が定まっていなかったからというのもありますね。
因みに今回の記事を書く気になったのも、上に挙げたコンピレーションを過去に聴いたことがあったからこそでした。どうも私はジャンルが分岐する節目に当たる音に図らずも反応してしまうようで、ついついこのような記事を時折書きたくなってしまうのです。まぁ余談ですが。



$日々是躍動三昧!-eoadE.O.A.D. - Love The Feeling (1993年/ Ibiza)
♪m-1 Love The Feeling
♪m-2 Love The Feeling (remix1)

UKレゲエからの影響を濃厚に反映したジャングル/ドラム&ベースを多数リリースしていたレーベル、Ibizaからのシングル。このレーベルも初期はハードコア・テクノの影響を受けたトラックをリリースしているが、本作はそのような曲調とブレイクビーツ・スタイルが微妙な風合いで同居した、まさに転換期的な作風に仕上がっている。
軽快で清涼感あるフレーズ、早回しヴォーカル・サンプリングの影で濃厚にのたうつベースラインは、やはりUKダブ/レゲエ由来のものか。このような太めのベース廻りも、スタイルが確立してからのハッピー・ハードコアで頻繁に聴くことが出来るものだ。





$日々是躍動三昧!-citedelCitadel Of Kaos - Pt. (1993年/ Boombastic Plastic)
♪m-1 Ceasefire
♪m-2 Passion

ハードコア・テクノだけでなく、ハード・トランスのシーンでも経歴があるJan Salisburyのドラム&ベース/ハードコア系プロジェクトによるシリーズものシングルの4作目。
m-1こそダーク・アシッド色あるジャングル・スタイルだが、m-2はその対極とも云える晴々とした曲調。BpM値も高めで、殆どハッピー・ハードコアと言っても差し支えないくらいまでに進化している。
突然連打されてはすぐ消えていくピアノ・フレーズと、つんのめるような刻み方のブレイクビートが印象的。中盤のリズム主体で控えめな展開も、意外と聴ける。






$日々是躍動三昧!-fatcontFat Controller - In Complete Darkness
(1993年/ Uphoria)
♪m-1 In Complete Darkness
♪m-2 Doina De Jale

制作にSL2ことSlipmattが参加したシングルで、このジャンルにおけるクラシックスとしても認知されている。
m-1は、まさに典型的なハッピー・ハードコア・スタイルを踏襲した内容で、どっしりとした地を這う低音ストリングスに軽快なピアノが絡む。後半部にだけ晴れ渡るようなシンセサイザのフレーズが挿入されるなど、展開もそれなりに凝っているが、派手さはそんなに感じられない。
“ハードコア”とジャンルに付いていても、激しさはないのがこのジャンルの特徴。
m-2のレゲエを彷彿とさせる春めいた曲調も、そつなく聴かせてくれる。





$日々是躍動三昧!-ultrasonicUltra Sonic - Arpeggio (1993年/ Clubscene)
♪m-1 Arpeggio
♪m-2,m-3 Annihilating Rhythm(pt1,pt2)

スコットランドの2人組ハードコア・テクノ・ユニットによる、出世作と云えるシングル。
表題作m-1こそアシッドベースを擁した典型的なハード・トランス・チューンではあるが、ここは彼らの名を一躍知らしめることとなったm-2に注目したい。序盤でいきなりテンポを落としてから挿入される、煌くようなピアノ・フレーズと、ライブ・アクトを意識したMCが印象的で、このMCスタイルはドイツのトランス・アクト(当時)のScooterも模倣したほど。どちらかというとギャバー寄りの作風だが、後のハッピー・ハードコアで頻繁に見られるギャバーからの影響を先取りしたものとも取れるだろう。






$日々是躍動三昧!-dougalDougal & Symphony - Life Is Like A Dance
(1993年/ Salamander)
♪m-1 Life Is Like A Dance
♪m-2 Psychotic Analysis

ハッピー・ハードコア・シーンの古株Dougalが黎明期に発表した3rdシングルで、当時のハッピー・ハードコア的作風と比較してブレイクビーツ色がかなり少なく、どことなくトランスからの影響を匂わせるm-1が興味深い。春めいたストリングスと軽快なピアノの使い方にも、その傾向は強く出ており、その後のトランスコアへ通じる路線が既にこの時点であったということなのだろうか。
余談だが、このm-1は後にロッテルダム・ギャバーの代表格Paul Elstakがハッピー・ギャバーとしてアレンジ(盗作?)している。





$日々是躍動三昧!-happyhcepDJ Sammon - The Happy Hardcore ep (1993年/ I'm Back!)
♪m-1 Untitled
♪m-4 Untitled

Pianomanという名義でハウスを多数手掛けているJames SammonのDJ Sammon名義による、ただ1枚きりのシングルで、“ハッピー・ハードコア”という言葉が使われだした走りと思われるタイトルがここで見られる。
4曲入りepで全てに曲名がないが、内容はイーブンキック+ブレイクビートという典型的なプレ・ハッピー・ハードコアの様式に則ったもので、主軸の突き刺さるようなフレーズと金属質なピアノの寂寥感あるフレーズが交互に繰り返されるm-1が印象的。m-4はUKハードコア・テクノDJの大御所Stu AllanことVisaの“Let Me See Ya Move '93”をそのまま使った疾走感ある曲調だ。





$日々是躍動三昧!-flash電気グルーブ - Flash Papa Menthol
(1993年/ kioon sony)
♪m-4 カフェ・ド・鬼(かなり面白い顔mix)
♪m-10 電気ビリビリ(remix)

今回の記事で何故彼らの作品が取り上げられるのか疑問に思う方もいるだろうが、このリミックス・アルバムの最後尾に収録されたm-10を聴けば、その疑問もたちどころに解消されるだろう。
高速BPMのイーブン・キックに切り刻まれたブレイクビート、時折加味されるレイブを彷彿させるフレーズ、浮ついたような明るさある曲調…どこを取ってもハッピー・ハードコアのスタイルを踏襲したものとして差し支えないものだ。
このリミックスは、おそらくメンバーの石野卓球がイギリスを旅行した際の体験が元になっているのだろうが、日本人の誰よりも早くこのスタイルに着目したのは流石としか言いようがない。






こういった諸作を探ってみると、多数のシングルでプレ・ハッピー・ハードコア・スタイルとジャングル/ドラム&ベースが同時に収録されていたり、それらを輩出しているミュージシャン達もジャングル等のブレイクビート・スタイル的作を多数手掛けていることに気付くかと思います。これは元々根底が同じジャンルから進化したものだからということに加え、“ドラム&ベースの入り口としてのハッピー・ハードコア”という任も担う、という意味合いもあります。
ハッピー・ハードコア・レーベルの老舗として知られるSlammin Vinylも、初期は完全にブレイクビート系のリリースを続けていましたし、逆にMoving Shadowのようなドラム&ベースのレーベルも、前述したようにイーブンキックを用いた曲群をリリースするなど、地続きなものでした。そのような傾向はハッピー・ハードコアがジャンルとして成立して以降も、しばらく続くことになります。
そういえば故Pete Namlookが運営していたアンビエント/チルアウト・レーベルであるFax +49-69/450464も、アンビエント諸作とともにトランス・テクノ系を同時収録するという形でチルアウト・シーンを広める動きを進めていましたが、それと重なるものを感じるのは私だけでしょうか。


1994年になると、そこかしこで“ハッピー・ハードコア”というジャンル名が使われるようになります。その手のコンピレーションも編纂されるようになり、シーンとしての下地も整ってきました。



$日々是躍動三昧!-happy_hardcoreVarious Artists - Happy Hardcore
(1994年/ Jumpin' & Pumpin')

♪m-1 Slipmatt - Breaking Free (DJ SS rollers mix)
♪m-2 Higher Level - Visions Of Light
♪m-3 Jack 'N' Phil - Don't Beg 4 Love
♪m-5 Druid & Vinylgroover - Kounter Attack
♪m-6 Just Another Artist – Rhythm
♪m-8 Love Nation – Positive
♪m-11 Jimmy J & Cru_L_T - Take Me Away
♪m-12 DJ Red Alert & Mike Slammer – Let's Do It






ジャンル名“ハッピー・ハードコア”を冠したという意味では、草分けと云えるシリーズ・コンピレーション第一作目にあたる本作は、これまで挙げてきた“ブレイクビーツ・テクノから派生したハッピー・ハードコア”の、1994年における一応の成立した姿を提示したものとなりました。典型的なハッピー・ハードコア・スタイルの曲群中にあって、ブレイクビーツ・テクノ/ドラム&ベース調のものも収録されていますが、これは前述したように、これら全てがブレイクビーツ・テクノという括りの中にあるという捉え方だからこそで、一身不離の運命共同体に他ならないからでしょう。
収録内容を見てみますと、SL2ことSlipmatt、DJ Seduction、Red AlertといったUKハードコア・テクノの黎明期からシーンを牽引してきた重鎮達を中心にした構成で、どれもこれも深みや哲学的な曲調から対極の位置にあるような曲ばかり。難解さも気取りも殆ど感じられませんので、音楽に深い意味合いを求めているような方が素面で聴いていると、逆に辛くなって投げ出してしまってもおかしくありません。しかし、その中にあってJack 'n' Philによるm-3は、当時のトランスを意識したような深みあるフレーズとストリングスが織り成す、浮遊感溢れる曲調が素晴らしいので、これは個人的にも推しておきたいところです。



以上、駆け足でハッピー・ハードコア成立までの経緯を個人的観点にて追ってみましたが、如何だったでしょうか。
1994年以降についてはジャーマン・ハード・トランス(特にWestbamのLow Spirit周辺)や、そこから派生したニュー・エナジー、オランダ・ギャバー周辺の影響を踏まえた作風も頻出していきますが、これについては別の機会へ譲りたいと思います。収拾が付かなくなってしまうので(笑)。
では、今回はこれにて。