2010年8月

今年の夏は特に暑くて、晴れの日が続いた。
夏らしい夏だった。

幼馴染や、学生時代の友達と久々に会ってランチをすると、みんなお腹の大きさにびっくりしながら撫でてくれた。

臨月に入っても、一度もお腹が張ることがなく、胎動も弱くて、赤ちゃんが無事なのか心配になる日も多かった。

もう出てきても大丈夫だから、早く元気な顔見せてって思ってた。

赤ちゃんとのご対面が近づくにつれて、障害はないだろうか、すごく不細工なんじゃないかと心配になった。
もちろん、どんな子でもその子の人生があって、それを尊重したいと思っていた。

ただ、実際に抱いたときに、正直可愛いと思えない自分がいたら嫌だなって。

今までたいしてよく見ていなかった、雑誌や本に載ってる赤ちゃんたちの写真を改めて見てみた。
半分くらいの子が、可愛いと思えなかった。

障害のある子を育てているお母さんのブログも拝見した。
どんな気持ちで迎えたんだろう。

どんな子だろうと愛せるように、心の準備をしておきたかった。

予定日になってもお腹の張りがないので、促進剤を使って早く産むために入院した。
薬を使って陣痛を起こす前日に、ラミナリアで子宮口を開く処置をした。

その夜、突然5分間隔の陣痛がきた。

陣痛室で予想以上の痛みと格闘し、朝になってやっと分娩台へ。

15分ほどで、ズルリと赤ちゃんが出た感覚があった。

5秒後、赤ちゃんが低い声で泣きだした。
良かった、生きてた。

処置をして私の横に寝かされた赤ちゃん。

こっちをじっと見つめている。

肌はピンクというか、肌色というか、普通の赤ちゃんの色だった。

顔は、旦那にそっくりだった。

可愛い。心からそう思えた。

長い痛みと一晩中戦った疲れで、あまり喜びに浸れる気分でもなく、ただほっとした。

旦那は仕事が休めず、来ることができなかったが、付き添ってくれた母は赤ちゃんを見て、可愛い可愛いと初孫に大喜びしてくれた。

初めて抱いたときは、テレビの今日生まれた赤ちゃんコーナーの取材のときだったから、テレビカメラの前で少し緊張した。
赤ちゃんは3100gと標準くらいだが、両親学級で使った人形より、ずっしりとした重みを感じた。
赤ちゃんを抱きなれた母が抱っこしても泣きやまなかった赤ちゃんが、私が抱きしめた途端、ぴたりと泣きやんだ。
母になったんだと、実感した瞬間だった。

2010年7月。


実家に里帰りする日、旦那と妊婦向けの大きなイベントに寄って行った。


お腹の赤ちゃんに話しかける道具で、旦那と一緒に話しかけたり、オイルマッサージで癒されたり、赤ちゃんと行ってみたい国を箱庭で作ったりと、旦那と楽しい体験ができた。


大きなお腹で、旦那とマタニティフォトの撮影にも行った。

撮影も写真も、イベントのときにもらったチケットで無料だったから行ったんだけど、良い記念になったと思う。


快晴の日が続く毎日。

入道雲が広がる空。

いつの間にか蝉の声が響く季節になっていた。


冷房のきいたショッピングモールを毎日お散歩した。


身体を冷やすのはよくないけど、よくかき氷を食べた。


相変わらず胎動はとっても大人しくて心配になる日も多かったけど、足元が見えないほど大きくなったお腹に、抱っこできるくらい大きくなった赤ちゃんがいるんだと思うと、不思議な感じがしたし、嬉しかった。


2010年6月。


ついに妊娠後期に入った。


一番胎動が活発な8カ月でさえ、一日中ほとんど動いているか分からない日があるほど、胎動が弱くて心配になった。


胎動が痛いなんて、信じられない。


それでも、梅雨入りする頃には、赤ちゃんがしゃっくりしているときに旦那がお腹に手をあてると、ピクンピクンって動いているのを感じてもらえた。


妊婦向けの無料コンサートや講演会にも行った。


だんだん、私も出産するんだなって、まだ実感はわかないけど、そう遠くないうちにその日がくるんだなって思うようになっていった。