おはようございます。仏の語り部、有坂脩岳(ありさか しゅうがく)です。 今日もブログを読んで頂き、ありがとうございます。 今日は 【墓場で生まれた子】 というお話です。 霞ヶ浦(かすみがうら)に流れ込む桜川の川沿いに新治(にいはり)という村があり、その村のもち屋に夜な夜なもちを買いにくる女がいた。夜更けになると戸をたたく音が聞こえ、戸をあけてみるといつも白い着物姿の女が店先に立っているのである。「またもちかね」 もち屋のあるじが声をかけても、女はいつも黙って手を突き出したままでいた。手の上には一文銭が載っており、あるじがもちをひとつ手に載せてやると女は銭を置いてどこへともなく行ってしまうのであった。それが毎晩続くのである。さすがにもち屋のあるじも気味が悪くなってきた。ーー今夜も来るのかな・・・・・。 あるじが待っていると、その夜もやはり女はやって来た。あるじはもちをひとつ渡してから女の跡をつけてみた。さいわい月が出ており、女の白い着物がやみの中に浮かんで見えた。 しばらく行くと、女の姿がふっと消えた。もち屋のあるじは女の消えたあたりを捜してみた。辺りには民家はなく、道のわきは墓場になっていた。恐ろしくなったあるじが逃げ出そうとすると、どこからか赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。あるじは声をたどり、墓所の中へ入っていった。すると、そこには一基の真新しい墓があり、耳を澄ますと赤ん坊の泣き声はその墓の中からしてくるのである。あるじは仰天して大声を上げた。「えらいことだ。一大事だ。みんな来てくれ」 集まった人々の手を借りて墓を掘り返してみた。するとひとりの女が葬られており、その傍らにへその緒もとれていない赤ん坊が泣いていた。 墓に刻まれた名まえから、遺体は近くの東城寺(とうじょうじ)の門前に住んでいた女とわかった。 女は亭主とふたりで花を売り、まっとうな暮らしを送っていた。こどもを宿していた女は臨月を迎え、夫とともに出産の日を楽しみにしていた。そんなある夜、賊が押し入って女だけが殺されてしまったのである。亭主は泣く泣く女を葬ったが、次の晩からその亡霊がまくらもとに立つようになった。「お金を少し下さい。お金を・・・・・」 亡霊はせつなそうに金をせがんだ。そこで亭主が一文銭を渡すと、亡霊はそれを受け取ってすっと消えてしまうのであった。女が埋葬されるとまもなく棺の中でこどもが生まれ、彼女は夫からもらった金でもちを買ってその子を育てていたのである。 助け出された子は生まれつき真っ白な髪をしていた。村人たちは哀れに思い、小田(おだ)の解脱寺にその子を預けた。 こどもは成長してから出家し、母親の菩提(ぼだい)を弔うために全国を行脚した。そして、頭白上人(ずはくしょうにん)と呼ばれる高僧になったということである。(すずき出版『仏教説話体系』より)
仏の道
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