ドルアーガの塔【つないだ手は】第12話本編分析 | 遠藤雅伸公式blog「ゲームの神様」

ドルアーガの塔【つないだ手は】第12話本編分析

 2005年の11月に、このアニメを作りたいという話を聞いてから三年余、最終話は遠藤も納得のハッピーエンドになっている。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-対神兵器となった塔
 2つの塔が一緒になって対神兵器となったわけだが、ドルアーガの塔が神と戦うものだという設定は、このアニメに特有の物だ。もともとアニメに登場する塔は「ドルアーガの塔」ではなく、原作ゲームでいうところの「ドルアーガの塔」崩壊後、突如として現れた新しい塔である。
 大人の理由から「ドルアーガの塔」と呼ばれているが、これは「黒ギルの塔」であり、対神兵器として作ったのも黒ギルだろう。ただし老ギルとの乖離が塔を2分し、幻の塔と下の塔に分かれている。だから、黒ギルを倒すための数々のギミック(カイやサキュバスの封印など)が、下の塔には存在するのだと思う。遠藤の憶測だが。
 それにしてもニーバの塔に搭載されている兵器は、応戦に使われたランチャーなど特に、神話である原作ゲームの世界観とかけ離れている。1つの可能性としてパラレルに分かれた結末にしたい、という賀東さんの好きにやりたかった部分がここだったのかなぁ、と今は思う。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-ジルにニーバの居所を知らせるグレミカ
 グレミカは塔の真実について、最も情報を持っていた人間の一人だろう。それがニーバの居場所をジルに知らせたということは、既に自分ではニーバに敵わないことを悟っていたのでないだろうか?となると、グレミカ自身の目的は、対神兵器を自らの手に入れ、敵対する勢力を全て葬ってスーマールの再興を果たすことにあったのだろう。
 ではなぜ、そんな目的を持つに至ったか。それはもう「遠い親戚」というグレミカとニーバの母親が、スーマール皇帝の末裔だったからだろう。旧スーマール派というからには、その皇帝は即位と共にギルに帝位を禅譲してウルク建国の立役者となったホルス帝ではなく、アンシャーの陰謀でバビリムに攻め入ってドルアーガを復活させてしまった、武帝バララントのこと。ただし、スーマール皇帝は世襲ではないので、たとえグレミカとニーバがバララントの直系末裔だったとしても、皇帝を約束されているわけではない。
 この辺りの話は、DVDのオーディオコメンタリーに収録が望まれる。明らかに描写不十分なパートだ。そして、直接グレミカがニーバに仕返したいのは、従者アクラの敵討ちの線が強い。グレミカを「お嬢様」と呼ぶアクラは、バララント派の残党で間違いなさそうだ。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-イシターの信託を受けるイシュハラ
 イシュハラ(カーヤ)がイシターの巫女としての力を示すシーン。遠藤の新作設定では、カイが巫女としての力を失った後も、グラ、マーム、ワストとその宮廷巫女の地位は継承されていたが、ウルクとして統一された後はイシターへの傾倒が統治の障害となりかねないため、サルゴンが宮廷巫女そのものを廃止している。
 イシュハラがイシターの声を聴くことができるのは、カイの血筋だからというわけではなく、その力をイシターに認められているから。もちろん、ギルの家系は半分はイシターの巫女の血を受け継ぎ続けているのだから、その曾孫が先天的に能力が高いのも納得できる。
 イシターは慈愛の神として作中では語られているが、大神アヌに変わってドルアーガと戦ったように、本質的には戦神だ。ニーバに一方的にやられているわけがない!
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-ギル王の剣を託される
 ニーバを倒すことを、ジルたちに託すケルブ。ギル王から賜った剣と、使い慣れた丸盾がジルに渡される。これは、ガーディアン(ドルアーガ)を倒したのがギル王だとしたアミナが、実際に倒したジルたちの装備を取り上げておいたのだと思う。
 アミナなく、宮廷の倉庫へも入れるようになったケルブとエタナが、敬愛していた王が選んだ戦士に伝説の剣を返したことになる。どこかで拾ってきた騎士団の剣で、ラスボスを倒してしまうのでは興醒めだしね。盾も1期を象徴する存在だから、やっと本来の装備に戻ったわけだ。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-ただのオラクル、ただのカーヤ
 カーヤとイシュハラを使い分ける。北町奉行と遊び人みたいな、先の副将軍と越後のちりめん問屋の隠居みたいな、鈴木建設の社長と釣り仲間の爺さんみたいな、日本人の好きそうな話だ。ひょっとしたら、ギルやカイから「お忍びキャラも」を作っておけ、と教わっていた可能性もありってことで。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-ニーバについて語るジル
 ニーバについて皆に語るジル。ジルがこんなニーバ分析をしていたとは驚いた!
 いずれにせよ、屈折しているニーバと真っ直ぐなジルという対比で、一緒に聞いていたファティナやウトゥもニーバの別の面を知ったことだろう。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-最強戦士クーパ立つ!
 1期の裏1話で登場して以来、その怪力からゴーレム疑惑や、マイトたち戦闘機械と同じメーカーの最新機種だとか言われていたクーパ。在庫一掃ということで、持っていたゴルフバッグを振り回す。ただそれだけなのに、きっとクーパが通った後は敵死体の山だろう。
 ウトゥが使っていたハンマーを持たせればもっと強いとか、ガーディアンも片手で持ち上げられるとか、色々な意見もあると思う。最後に物理的な攻撃を見れて、すごく納得できた。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-これでチャラにしてあげる
 ジルに付いて行くことを諦めたファティナが、カーヤとジルを先に送り出す。そんな気持の整理をつけるための一発。「これでチャラにしてあげる」とはカーヤにどんな貸しがあったのだろうか?
・カーヤのことを想い続けているニートを半年も食わせてやった食費
・自分が想っていたニーバを寝取られた腹いせ
・直接対決の場から半年逃げていたペナルティ
 結局、別れ際にキスしておいてZAPをかまし、謎の女としてジルの妄想を膨脹させるという卑怯な作戦を天然で仕掛けた、カマトト女への敗北宣言と取るのが順当そうだ。「いいのか?」とウトゥに聞かれ、フレーム外に上を向いたとき、一瞬涙が画面に落ちる。これで気持ちを切り替えたんだろうね。
 むしろ、好きだったジルが結局カーヤを選んだ失恋の涙ではなく、全力で尽くした半年が放置プレイに負けた悔し涙と思いたい。ファティナは熱い女なんだから。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-ある意味、怖い話!
 直後にウトゥがファティナにプロポーズする。何となく今なら言えると思っただけで、ウトゥはファティナのことをずっと想っていたに違いない。パーティーを全滅させたニーバを慕ってというより、ニーバ目当てで加わったファティナを守るために付き合ってると思えたから。
 ファティナをなぐさめようとしたという見方もあるが、失恋したタイミングを狙ったという方が、今まで一緒に行動した理由も説明がついて納得できる。ニーバに振られた時には、そのチャンスもなくZAPされちゃったからね。
 で、ファティナの答が「やーよ!」なのだが、これは死亡フラグを消しに行ったものではないだろう。ウトゥは過去幾多の死亡フラグを立てたものの裏切っている実績がある。むしろ遠藤はツンデレなファティナのことだから、「やーよ」はOKの意味だと取ったのだが?
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-サキュバスの本領発揮
 サキュバスの精神攻撃によって、死んだアーメイとヘナロが現れる。ご馳走もあるとヘナロが言うが、ジルってこんな攻撃をサキュバスにさせるほど子供だったとは・・・ガッカリだ。
 ジルがもっと大人なら、サキュバスの攻撃に登場するアーメイは鎧なんか着ていないはずだし、ヘナロが紹介するのもご馳走ではなく、3話でメルトが入っていたような美女に囲まれた風呂だったと思う。こんなジルだから、ファティナの魅力なんか理解できないんだろうね(笑)
 こうなると、ウトゥの素顔に頬を赤らめていたジルを思い出してしまうのだが・・・
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-必死にはなってる・・・?
 親戚のお姉さんのパンツを丸出しにして、「神も必死になってる」とか言ってるニーバ。お前の方がどれだけ必死だよ!と突っ込みたい(笑)
 グレミカとニーバの戦闘シーンは、直接描かれないことで想像が膨らむ。お互い弓ではなく体術での勝負になったと思うのだが、何せ手が8本あるドルアーガだから、押さえておいて服を破るくらい楽々なのかも知れない。グレミカのパンツが白だったのは意外だが、決死の覚悟の死に装束だったと無理に思った。
 さて、必死になっているとニーバが言う神だが、ニーバは「神々」を相手にしていると思っているが、神側はイシターが片手間で相手をしているだけにしか見えない。黒ギルがメルトやファティナの攻撃を受けて、「チクチクと!」と腕を振っただけで気倒したのと同レベルかな。大神アヌが本気になれば、真上から塔を全て飲み込む直系700mのビームが来て、塔は瞬間霧散で確定。
 むしろ、人間たちで決着をつけるように適当な時間稼ぎをしてくれたようにも思える。さすがは慈愛の神。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-俺がドルアーガだ
 俺がドルアーガだとジルに宣言するニーバ。この時点でニーバは神格を得ていると見てよい。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-アーメイを貫いたのはルビーメイスだった
 そんなニーバの手に、アーメイを貫いた刺棘が外れて渡される。先端に赤い結晶が見えるところから、この棒がルビーメイスであることがわかる。ルビーメイスとはドルアーガであることを象徴する武器。これを手にしたことで、ニーバがドルアーガの力を得たことは確実となった。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-ニーバの本音
 「お前にっ!ずっと苛立ってたんだっ!!」と叫ぶニーバ。最後の戦いが神の手を煩わせるレベルの、壮大な兄弟喧嘩だったとは・・・と思った人も多いだろうが、これは兄弟喧嘩の姿を借りた、神々の対決でもあるのだ。カイ(イシュハラ)vsサキュバス、イシターvsドルアーガ、イシター(バビリム)vsアンシャー(スーマール)、イシュハラが丈夫で騙し易そうだと思ったジルは、サキュバスが憑依している男の弟という因縁を持ち、それをカイが認め、ギルも剣を与えているのだから。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-体が軽い⇒鎧が重いんだって
 体が軽いというジルだが、ガーディアンとして重い鎧を普段は身につけているのが、ニーバに壊されて身軽になったためなのではないか?
 このアニメで軽量化呪文を使ったのはカーヤとヘナロだけだが、ジルに吸盤の矢が刺さっているようには見えないし、魔法の羽もついていない。装甲を捨てて身軽になって、戦い方を変えたくらいに考えた方がよさそうだ。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-兄弟重なってますが、ジル×ニーバではないです
 ジルのことを常に考えてくれてたように思えるニーバだが、仲良くできなかったのは兄としての面子だけだったのか?ニーバの母がスーマールの皇帝末裔だということを、隠しておくようにニーバにも教えていたのだとすると、「本当は俺が皇帝のはずだ」みたいな歪んだ優越感があった可能性がある。
 このシーンの最後に、言わなくても分かるからカットされたセリフが台本にはあった。「ファティナとウトゥに謝っといてくれ。別に嫌いだったわけじゃ…」ここで大きな岩が落下。カリーの手裏剣を矢じりに使った矢でパズズを撃つとか、本当のニーバは人を思いやる結構義理堅い男なのだ。2期から登場した人物のほとんどを手に掛けたのは、業を負わせるためなのかも知れない。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-ニーバを「兄さん」と呼ぶジル
 ジルが最後にニーバに向かって「兄さん」と呼びかけるシーン。台本では「にっ!」だけだったのが、それだと「ニーバ」と呼んだとも取れるので、ミスリードを避けてアフレコの時に数回録り直し、「兄さっ!」に変更された。泣けるセリフの1つだね。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-こうなったら責任取るしかない
 ジルの落下をカーヤが支えたところは、1期から見ている人にはジーンときたのでは?そんな2人をファティナが支える。ファティナは本当にカッコいい。でウトゥだけど・・・ファティナが「ちょっとやめて!」と言って足をバタバタさせるのではなく、しっかりとウトゥの腕に足を絡めている。当然上の画像のように顔面が接触するわけですよ。でもウトゥだから許せる。というか、もうこうなったらウトゥも責任取っちゃうよね。ブランド好きのファティナにしても、相手はチャンピオンのキャプテン・モローなのだからOK。
 ウトゥがズルッと来た時に、クーパの「キャ~ッチ!!」で「これで助かった!」と誰しも思ったよね。メルトなんかセフセフできるくらい役に立ってないし(笑)
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-このためにクーパの怪力設定があった
 逆にこんなに一気に引き上げたら、途中のどこかが切れてしまうと思うんだけど、そこはファンタジーだからね。今回は、いやこのアニメはクーパが主役だったと言えるかも。
ゲームの神様・遠藤雅伸公式blog-崩壊した塔
 イシターの反撃もなくなり崩壊した塔。原作ゲームのファンなら、これが「イシターの復活」の舞台に酷似していると気づくだろう。崩壊はしたものの、1000m程度の高さは残されているので、富と名声を求めて登頂者が挑戦する余地はある。

ドルアーガの塔【つないだ手は】第12話エピローグ分析に続く