お庭の畑を耕して、ぐったり疲れたアリスが

しばらくお気に入りの白いお部屋に戻って休んでいると、

なんだか、また元気がわいてくるような気がしました。


「また、あのお庭に戻ってみよう。。。」


庭に戻ると、今度はエネルギーがみなぎっていて、


どんな畑仕事でもできそうな気がします。




さて、何をしようかしらと思って、


アリスは、シャベルの脇に置いてあった苗のことを思い出しました。


「今耕した畑に、苗を植えてみよう。」

箱の中にはイチゴの苗がありました。

あら、でも、イチゴの苗には、「5イノチ」と書いてあるではありませんか。


「お金を払わなければいけないのね。」

これはどういうことかと思っていると、


その時、アリスのポケットの中で、「チャリン」という音がしました。

中を探ると、ピカピカのコインが入っているではありませんか。

コインには、「イノチ」と書いてあります。


その時、アリスは二種類の気持ちを抱いてきました。


一つの思いは、

「素敵だわ。魔法みたい。このお金で苗を買えるのね。」


そしてもう一つの思いは、


「イノチ? イノチのコイン? 

それと引き換えに、苗を買うのね。

このイノチって、もしかしたら、私のイノチ?

私のイノチと引き換えに、苗を??」



けれども、この美しく、かわいらしいお庭のどこにも、

何らかの悪意に満ちた、アリスの命を脅かすような意図が

隠されているようには思えません。


だって、芝生は青く、空にはぽっかりと、幾つか雲が浮かんでいるだけ。


そして、小さなかわいらしい、赤いお家。



アリスは胸騒ぎをかき消し、


ありったけのお金を払って、


不思議なイチゴの苗を幾つか買い、この不思議な畑に、

丁寧に、そっと、植え付けました。

そして、水をたくさんあげました。



「育て、育て、イチゴさん。

真っ赤に育ってくださいな。」



イチゴは病気にかかることもなく、

害虫にやられることもなく、

水をやればやっただけ、見る見るうちに、たくさん実をつけていきました。



イチゴを収穫し、また苗を買って植える、それを続けて行くうちに、

苗の箱にはまた別の作物の苗が増えていき、

間もなくアリスの畑には、数種類の作物が実るようになりました。


収穫をすればそれで収入が入り、お金も増えていく。

増えたお金でまた、苗を買って、収穫する。


そうやって、畑仕事を続けて行くうちに、

アリスの体もだんだんと丈夫になり、

そうしょっちゅうお休みしなくても、畑仕事が続けられるようになりました。

そして、小さな農場らしきものをどう営んでゆくかを、

少しずつ、学んでいったのでした。


やがてお金が貯まって、調理台を買い、オーブンを買い、料理もできるようになりました。






活気のある庭。

色とりどりのきれいな花。

次々と実る収穫物。

かわいいキッチンでつくるお料理。



アリスは、この小さな農場での素朴な、まるで夢の楽園のような生活を楽しむようになってきました。


「ああ、私、ここでの生活が大好きだわ。

作物を育てて、おいしいお料理を作って毎日を過ごせるなんて、

なんて幸せなのかしら。」


アリスはここに来るたびに、時を忘れて庭仕事に没頭するのでした。


「今度は何を植えようかしら。

赤いパンジー? それとも黄色?

ああ、野菜サラダを作るのに、トマトがもっと必要だわ。

トマトの苗も、もっと買ってきましょう。」



この不思議な園では、嫌なことなど何一つ、起こらないかのように思えました。




けれど、ある日、この不思議な園には、今までアリスが知らなかった、

別の面があることに気づいたのです。


そして、それが、アリスの不思議な園の生活を、がらりと変えたのでした。。。。







その4に続く(。。。。おそらく。)