今回の記事は、サラブレッドの

種としての背景(成り立ち)や存在意義、

競馬の実情を知らない方には

単なる残酷話に見て取れる可能性があります。

あくまで、私個人が思い入れの強かった馬に対しての

最後の記録として残した記事なので、

それを踏まえたうえで、読む方は目を通してください。

 

  

◆武豊落馬で骨折の疑い、桜、皐月絶望的

http://www.nikkansports.com/race/news/f-rc-tp0-20100327-611041.html

(上記PC版記事へリンク/ニッカンスポーツ)

 

最終コーナーを回り、

直線に向いたザタイキの脚が

思ったほど伸びてこない。

ゴールまでおそらく残り1ハロン。

ライバル達は射程圏内にいる。

(どうした?・・・ザタイキ。)

(あのくらい、お前ならかわせるだろう?)

 

「・・・行け。行け!伸びて来い!ザタイキ、頑張れ!」

私はTV画面に向かって思わず檄を飛ばしていた。

次の瞬間――。

ザタイキは、まるで何かに引きずり込まれるように

前足から崩折れ、緑のターフに沈んでいった。

 

  毎日杯の前評で、ザタイキは3・4番手の評価だった。

  けれど、良血のルーラーシップや素質馬リルダヴァル、

  ダノンシャンティなどの強豪を差し切れるとすれば、

  ザタイキしかいないと私は思っていた。

  ザタイキには、どうしても皐月賞に出走してほしかったから、

  優先出走権が得られるこの重賞は、

  是が非でも勝ち抜いてほしいとも思っていた。

  皐月賞では彼を軸の一頭に選ぶつもりだった。

  皐月賞は速い馬が勝つ。

  “ならばザタイキだろう”と、本気で考えていた。

  私にとって、デビュー当初から

  これだけ入れ込んだ馬はザタイキ初めてだった。

 

ザタイキは、武豊騎手もろとも

スピードに乗ったまま、激しく転倒した。

もんどり打つように仰向けになったザタイキと、

ターフに投げ出された武さんのそばを

後続の馬たちがゴールへと駆け抜けていく。

ザタイキは前へ進めない。

先頭馬群を追うカメラから、

ザタイキと武騎手がついに見切れた。

 

一瞬のことでわけが分からなかった。

頭が真っ白になったまま、声も出せなかった。  

しばらくしてパトロールビデオが流され、

ザタイキの右足が一瞬だけ見えた。

競馬ファンなら誰でもわかる。

予後不良の怪我。

私は、ますますわけがわからなくなった。

ただ、後から後から涙が溢れ出して止まらなくなった。

 

その後、豊さんに命の危険はなく、

骨折・打撲だけで済みそうだと知った。

あれだけの事故で不幸中の幸いだったなどと独り語ちる。

その反面、ザタイキの新しい情報は入ってこない。

胸騒ぎがした。不安が膨らんでいく。

嘘だ。

もう二度と会えないと分かっていた。

 

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なかなかあきらめきれなかった。

正式発表があった後も、受け入れられなかった。

苦しめるだけだと分かっているのに、手術や治療を望んだ。

ザタイキに賭けて、引退するまで馬券をすり続けてもいいから

もっともっと応援していたかった。

もう歩けないのに、最後にもう一度だけ

元気な姿のザタイキに会いたいと願った。

藤田騎手のブログに新しい写真をもっとアップしてほしいと思った。

いつか種牡馬になったザタイキに会いに行きたかった。

だけど、もうタキオン産駒は応援せんよ、

また怪我か。体質が弱い・・・

と酷いことを考えたりもした。

頭が混乱していた。

 

競馬には、物凄い感動と隣り合わせに

物凄い悲しみも存在する・・・

知っていたけれど、辛すぎる。

  

短い間だったけれど、お疲れ様でした。

ありがとう。

君の走りを見ていると本当にワクワクした。

期待してたよ。

もし、いつかまた君が、

サラブレッドに生まれ変わってくれたなら

必ず見つけ出して応援したい。

今はゆっくり休んでください。 

ありがとう。さようなら。

きっと、また会おう。