「アダプテーション」
アメリカ映画 2002/12/6 米限定公開 2003/2/14 米一般公開
1時間54分
監督:スパイク・ジョーンズ
脚本:チャーリー・カウフマン、ドナルド・カウフマン
出演:ニコラス・ケイジ、メリル・ストリープ等
こんにちは、映画アダプテーションについて書きます。ネタバレ有です。
アダプテーションはチャーリー・カウフマンが脚本を書いたことで有名な映画です。
チャーリー・カウフマンという人はずいぶん奇抜な脚本家でして、代表作に「マルコヴィッチの穴」「エターナル・サンシャイン」などがあります。
2004年公開のエターナル・サンシャインでアカデミー脚本賞を受賞しました。
で、このアダプテーションもアカデミー脚色賞にノミネートされています。
チャーリーはわかったけど共同脚本のドナルドという人は無視か、という人もいるかもしれませんが、無視です笑
なぜなら、このドナルド・カウフマンは実際には存在しない人間なのです。架空の人物がアカデミー賞にノミネートされたのは史上初めてらしいです。たぶん。
ではなぜ、このドナルドが共同脚本としてクレジットされているのか、という話になってくるのですが、そこからはこの映画を見てからの話でしょう。見たところで明確な答えは出ませんが。
では、徐々にネタバレしていきます。
ざっとあらすじを書くと、脚本家が次回作の脚本を書けずに悩んでいる、という話です。
本当にだいたいこんな感じです笑 まあ、これから追っていきましょう。
で、ここは複雑なんですが、この脚本家が先に説明したチャーリー・カウフマンです。自分が脚本を書いている映画の主人公に自分をおいているわけです。
チャーリーが次回作の脚本を書けずに悩んでいる、という脚本を、現実のチャーリーが書いている、と。
で、そのチャーリーを演じるのがニコラス・ケイジです。これははまり役でしたね笑
このニコラス・ケイジ演じるチャーリーはとにかく人付き合いが苦手で、自虐的で、美人と話すと汗だくになって、この女は俺のことをデブでハゲだと思っているんだろう、と頭の中で考えちゃうような男です。レディオヘッドっぽいです。 わかるわかる、という男性も多そうです笑
そして、家に帰って脚本を書いて、行きづまったらさっきの美人を思い出してオナニーをします笑
そのくせいい感じになった女性(アメリア)にもなかなか手が出せず関係が悪くなるというタイプです。
似たようなタイプからすればもはや笑えません。
その脚本というのは、スーザン・オーリアンという人が書いた「蘭に魅せられた男」という本の脚色(英語でいうとアダプテーション)をするというものですが、この本はジョン・ラロシュという蘭をひたすら追う男を追う、というようなドキュメンタリーのような本なので、起伏に欠け劇的なことも起こりません。それをどう脚色するか、というので悩んでいるんですね。
このチャーリーのストーリーと、蘭に魅せられた男のストーリーが同時に進んでいきます。
おそらくこれはチャーリーが本を読みながら頭で描いている映像をそのまま観客に見せているだけです。
さっきの美人な女性(ヴァレリー)は映画のプロデューサーですが、彼女とチャーリーの会話が面白いです。チャーリーはこの脚本をハリウッド的なものにしたくない、といいます。
すなわち、蘭泥棒を登場させたり、蘭からドラッグを作るような展開は嫌だ、と。
彼女は、オーリアンとラロシュが付き合うようにすれば、と提案します。
それに対してチャーリーは、だとしてもセックスはさせない、銃やカーチェイスもいらない、人生の教訓も学ばせないし、困難に打ち勝ち成長もしない、と返します。
それが人生だ、と。安易な盛り上げ方で客の興味を引くようなことはしたくないというわけですね。
チャーリーはハリウッド式映画の作り方みたいなのが嫌いなんでしょう笑
ただ、ここは重要なシーンです。
チャーリーが家に帰ると、彼の双子の兄弟、ドナルド・カウフマンが登場します。
これもニコラス・ケイジです。一人二役です。
ドナルドはうるさいやつで、チャーリーと違って気楽に生きている感じがします。彼女もできます笑
このあと彼も脚本を書く、と言い出します。で、彼の思いつくアイデアがことごとく「よくあるやつ」なので面白いです笑
最初はチャーリーもそんなんじゃだめだと相手にしていませんが、このドナルドが脚本家として人気になってしまいます。そのこともチャーリーを追いつめる要因になります。
ドナルドはロバートマッキー(実在する人物です)というシナリオ講師の講演にいき、彼の信者のようになってしまいます。
チャーリーは最初は完全に見下していましたが、あまりにもアイデアが出ず、ドナルドが実際に成功し、かつ彼から講演に行くようすすめらえるものだから、ついつい行ってしまいます。
そこでチャーリーは、彼に「何も起こらない映画というのはどうでしょう、それこそが現実の人生だと思うのですが」と、ヴァレリーに熱く語ったような自分の考えについて控えめに尋ねてみます。
するとマッキーからは「何も起こらない?君は何を見ている?!日々紛争や殺人が起こり、人を意識的に助けようとしている人が生まれている!君は人生を何もわかっちゃいない!」と激怒されます。
怒られちゃった、という感じなのですが、そのあとチャーリーは出待ちしてまでマッキーにアドバイスを乞います。
そこでマッキーは「その本はまったくストーリーがないのでそのまま映画にはできない。はじめに戻ってなにかドラマを作るべきだ。」
「終わり方が大事だ。欠点があろうと、終わりがよければヒットする。ただ、ずるはするな。デウス・エクス・マキナを登場させてはいけない。」とアドバイスします。
デウス・エクス・マキナとは古代ギリシャの演劇に出てくる、問題を全部解決してしまう超人的な存在、のことです。
チャーリーはこれに痛く感動しますが、ここも重要、というか面白いシーンです。
その後チャーリーは脚本をひとまず完成させ、ドナルドを呼びだして見てもらいます。
ドナルドはより原作の理解を深めるため著者本人(オーリアン)に会いに行こうと提案しますが、ここでチャーリーはビビります、人が苦手なので笑
ドナルドがチャーリーになりきっていくことになるのですが、オーリアンの質問への答えが不自然に感じます。
あまりにも模範解答すぎる、というだけで何か隠していると思ったドナルドはチャーリーを誘い、オーリアンの正体を暴いてやろうとします。
二人はオーリアンがマイアミに行くと知り、ラロシュに会うだろうと推測し、後をつけようとするのです。
はい、ここから、この映画は超展開を迎えます。
いちいち説明するのも面倒なのでまだ観てない人は観てください。
原作の蘭に魅せられた男は「少し気まぐれで、はかなく、手は届かない」というところで終わっています。チャーリーはオーリアンに会いに行くためにNYに行く途中の飛行機の中で読み終わっています。
しかし、オーリアンが本に書いてなかったことの告白という形で二人のその後が描かれています。
それが彼女を追うカウフマン兄弟のストーリーと出会うわけです。
終盤のカウフマン兄弟と出うまで、そして出会った後の二人のストーリーはどうでしょうか。
ドラッグやセックス、銃、車の事故、教訓、成長、ハッピーエンド、陳腐な主題歌、色々な映画の要素が組み込まれています。
これらはすべてチャーリーが(おそらく現実のチャーリーも)嫌っていたハリウッド的映画の要素です。あまりにも露骨です。
チャーリーがラロシュに殺されかけたときに水中から出てきたなんだかよくわからないやつ。
これはマッキーが言っていたデウス・エクス・マキナ的ですよね。使うな、と言われていた手法です。
また、チャーリーが戻ってきたあと、アメリアといい感じになりますね。あの時の照明がほんわりしていて、ちょっと夢の中というか、おそらく意図的に現実感をなくしているんですよね。
チャーリーがレストランのウエイトレスと妄想でデートするときも、ヴァレリーに天才と連呼され妄想セックスするときも、似たような照明が当たっています。
(ちなみにこのときヴァレリーが読んでいる脚本のタイトルは「蘭泥棒」です。
ベタにハリウッド的なものを作れば評価されるっていう皮肉でしょうか?
ベタなの作れば楽なんだけどな~、それは嫌なんだよな~っていう心の声でしょうか?笑)
オーリアンがラロシュにアリになりたいとか言ってるくだりでもそういう照明です。
あれはドラッグが出てきた後のシーンなので、やはり現実ではないのでしょう。
非常に不自然な展開で終わるわけですが、個人的にはチャーリー自身がハリウッド業界にアダプテーション(適応)してしまった、という皮肉かなと解釈しています。
エンドロールが終わった後、ドナルドの出世作である、THE THREEからの引用があります。
そもそも存在しない脚本家の存在しない映画からの引用っていうのがふざけてる感がありますが。
(このTHE THREEっていうタイトルについてはよくわかりません。
ドナルドがTHE THREEの脚本をチャーリーに見せる少し前に、チャーリーが寝れないっていうシーンがあるんですが、その時の時刻が3:33なんですね。
これ、夢みたいなもので、昼無意識に見たものが夜夢の中に出てくるっていう感じじゃないかなって思います。
要は、ドナルドはチャーリーのもう一つの人格をキャラクターにしたものにすぎず、夢や幻想程度の存在だということです。)
で、この引用がよくわからない。「結局私たちは一つだってことに気がついたの。体の中の細胞と同じ。心臓の細胞が肺の細胞を憎むのってばからしいでしょ?」みたいなこと言ってますが、よくわからない。
そのあとに、ドナルドに捧げる、みたいなこと言ってますね。
ここまで含めて、この映画は難解だな~と。
最後は投げっぱなしですが、何か補足情報や訂正がありましたら教えてください。