２０１６年本屋対象受賞作の『羊と鋼の森』を、昨日２回目を読み終えた。
先月初めて読んだのは、職場の同僚に勧められたから。読み始めるとまもなく、胸の奥で渇望していた何かが満たされていく予感がして、頁をめくる手を止め難く、貪るように読んだ。夜は更け窓の外は冷え切っているのに、森からふいてくる緑の風を感じた。
この小説には、随所に、人を癒す森の魅力があふれている。そしてその魅力が、実はピアノという一つの楽器に集約されているという、壮大で繊細なイマジネーションに、生気を吹き込まれるようだ。
多様な価値観に溢れた社会で、精神的なバランスを保つために模索したり、合理化や便利さを得ることで、時間的な余裕や人のぬくもりが失われることがあると感じながら、それでも成長することを目指さなければならない人にとって、そういうことで疲れたこころを癒すオアシスとなる美しさや、周囲との調和の感覚を与えてくれるように、私には思われる。
きっと、またこの小説を読みたくなると思う。私の中の森に出会うために。
嬉しいことに今年は映画化される。自分が子供時代に体験した森へのノスタルジーに浸りながら、『羊と鋼の森』の森を鑑賞するのが待ち遠しい。
できれば、同じように森を恋しく思う人と一緒に鑑賞したい。