今週は、今までにないほど様々なご相談を頂きました。

季節柄、着物リメイクのご注文やお問い合わせは多く頂戴し有難い日々でしたが、着物を着物として着たいというご相談が何件もありました。




●ほんの、ほんの少しだけ支援させて頂いているMさんを通じて、津波で海水に浸った着物が、送られてきました。
mさんは、私の仕事がよく解っていらっしゃらず(笑)着物関係の人にひひ程度の認識でしょうけど、
なんか、ちゃんとしてもらえそう?って感じたのでしょうね。恐縮です。
もちろん、信頼できる染み抜き京洗い屋さんに来てもらってレスキュー隊を結成しました。グー

持ち主は、東京に御住まいのMさんのおばちゃんなのですが、若い頃の着物なので宮城県の御実家に長い間保管なさっていました。

お母様がご用意した着物でした。
おばちゃんはもう着ないので、宮城県に住むMさん他の姪御さんたちに貸してあげて、何人もの親戚の女性が着た着物でした。

おばちゃんのお母様は、無念にも津波で命を落とされました。
Mさんにとってはお祖母様です。

新幹線が再開された日、
おばちゃんは被災した御実家に向かいました。そして、その着物を見つけました。
海水と砂で、もう諦めるほどの着物をなんとかしたいと思ったそうです。

そこに居合わせたMさんが、私のことを思い出したのです。

おばちゃん!東京に帰ったら、着物を何とかしてくれる人いるよ。って。

おばちゃんは、
Mさんが、会ったこともないエブリンを信じるわけがなく、半信半疑だったことでしょう。大手クリーニング店にもって行った方が安心だと思われたそうです。ほんと。(笑)
でも、東京に帰って来てすぐにお電話を下さいました。

電話の向こうは、やたら早口で急いでいる様子でした。
ちっとも私を信頼する様子も感じられません。
私こそ、ドキドキでした。

とにかく、被災地から送った着物が今日の午後に東京に届くから、そしたらすぐ行きます。って、仰いました。

その日の夕方、おばちゃんは
御来店になりました。

先回りして、京洗い屋さんとコンタクトをとり、だいたいの工程と金額を聞きました。うまくいけば、おばちゃんと同じタイミングで来店してくれるとも言ってくれました。お願い!間に合ってくれ!


おばちゃんと、袋を開けました。
まさか!


着物は、ぐっしょり濡れていました。砂と塩でじゃりじゃりしていました。

私、愚かなことをお聞きしました。

「干さなかったのですか?」


おばちゃんは、

「そんな、干すだなんて余裕は、あそこにはありません。骨だけ残った家に残った荷物はみんな、こうです。一ヶ月経っても滅茶苦茶です。」


私、震えました。

そして、濡れて可哀想な着物を抱き上げました。
黒かびは、以前からのもののようでしたが、一ヶ月も濡れたため酷くなっているようでした。

着物は、とても美しく、艶やかで、とてもとても着て欲しがっているようでした。若い日本女性によく似合う品の良いピンク色に四季折々の花々。

一時間以上、おばちゃんとお話しました。おばちゃんの表情はだんだんと柔らかくなりました。
私は、一緒になんとかしましょうね。
と繰り返しました。

おばちゃんは、店内を見る余裕が出来て、着物リメイク商品を見はじめました。


とても、


お好きみたいでした。(笑)


「ん~、この着物、あと、誰が着るかしら。洗い張りしたら洋服にした方がいいかしら。」なんて、言ってました。


そこへ、京洗い屋さんが駆けつけてくれました!よっしゃ!バトンタッチ!


聞けば、他にも被災地からの着物が届けられているそうでした。
油で洗って、解いて、水で洗って…順番違うかな?とにかく、海水を落としてから通常の洗い張りをするという、手間をかけたレスキューをしてくれるらしいです。
連休に洗い張りを済ませて、一旦御客様と打合わせ相談。また作業。また打合わせを繰り返してくれるそうです。

流石だわー!
大手クリーニング店は、やらないキメの細かい仕事です。

東京、新三河島の上田さんです。クラッカー
何かあると必ずお客様にお教えしています。

海水を落とした時点で、黒かびをどうするか、着物に仕立てるといくらかかるか、といった事項をゆっくり考えさせてくれるのは、良心的ですね。

そして、おばちゃん、
みんなで話し合った頃には笑顔で、安心なさった様子でした。


天国のお母様も、ご一緒に着物を囲んでいらしたことでしょう。ドキドキ
きっと、よくなる。
きっと、道がある。



その他、着物に合う帯が欲しいとか、デニムの着物を拝見したり、作り帯びをご注文くださったり、本当に、リアル着物ウィークでした。