玉川村の児童養護施設「森の風学園」にてオイリュトミーを中心とした芸術療法の時間を持たせていただいている。


緑の風が吹き抜ける森の風学園


「教科書通り」のことは全く通用しない現場で、
子どもたちとのオイリュトミーの時間は、私にとって
「人間の本質とは何か?」
を改めて思い起こさせてくれる、貴重な実践の時でもある。

◉心が嵐のときに


夏休みに入った最初の日曜、
低学年のクラスは、明らかに荒れ模様状態。

一人、嵐の状態になってる子がいた。

心が荒れ狂うときは、当然、行動も暴力的になってしまう。

大声を出したり、ものを投げたりしてしまうのだ。
感情の嵐の中で、本人もどうして良いかわからないのだろう。


他の生徒と隣の部屋へ避難?して授業を続ける。

◉美しい音と色が心に沁み込むと・・


それでも、美しい響きの音、美しい色合いのシルクを使うときは、いつの間にか、私の側に寄ってくる。

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美しい音を聞いたり、奏でたり、吹いたり・・
オイリュトミーで動いたり!


それが心の内側から変容するきっかけになるのです。
音楽って素晴らしい!

そして色とりどりのシルク布の体験も!

 

 


そのうち、古いピアノを乱暴に叩いて弾き出したので、ふと思いついて
彼の側に行き、
パッヘルベルのカノン風の和音をゆっくりピアノで弾いてあげ、
それにベース部分を子どもに担当させた。

「ド シ ラ ソ ファ ミ レ・・・」


すると・・
その子は、音の秩序の中で、もはや喚くことも、騒ぐこともなく、
一生懸命に指を折って4拍ずつ数え、美しい響きを一音一音、打鍵し、
集中している様子だった。

さっきまで荒れ放題だった子は、もういない。


◉子どもの内なる自我は

 「ほんとうのもの」を求めている


その子のうちなる自我が本当に求めているのは、きっとこの世界なのだ!

「E君の曲を、一緒につくろうね。
オリジナルソングだよ。だからいろんな練習をこれからしよう。リズムの練習も、棒の練習も」

その子は、仕事が終わって、私が心理療法棟を出るのを待ってくれていたらしく、ドアを開けると立っていて、車まで荷物を運ぶのを手伝ってくれた!

 

ピアノを一緒に弾いたE君は、仕事が終わった私が心理療法棟を出るのを待ってくれていたらしい。

ドアを開けると立っていて、車まで荷物を運ぶのを手伝ってくれた! 

何度も車の窓越しにタッチし別れ、私は那須へと車を走らせる。

 

 

◉人間らしい成長に必要な「真善美」

 

シュタイナーが語っていた「真善美」は、

ほんとうに大切だ!

 

子供が人間らしく

成長するためには、絶対に必要なのだ!





また、ある子は、あるとき、オイリュトミーの最後に

シルクでお花を作った後、こういった。


「今作ったお花を片付けたくない!」
「ずっとこのままにしてほしい。」


「カエルがぴょん」の手遊びの後に、お花の中に入ったカエル。

 

◉みんな違って、みんないい!

 

シルクのお花は柔らかく、美しく、

いつも授業の最後に歌いながら、くるくる巻きつけて作ることにしている。

 

今日は、どの色を使う? と布の入った風呂敷を広げると、

みんな目を輝かせて集まってくる。

 

布を持ち、前後左右に揺れたり、互いに出会ったり、離れたり・・・

風を感じたり、波になったり・・

それが

よほど楽しかったのだろうと思う。

空間を動いた後に、最後に作るシルクの「お花」は、

その楽しい思いの全ての象徴なのかもしれない。

 

そして、作られたお花は、見事にみんな一人ずつ異なるのが素敵!

「みんな違ってみんないい」

 

金子みすずの有名な詩の言葉だけど、

これを、

キャッチコピーのように道徳教材として唱えるだけではなく、

実際に自分で体験して、

本当に自分のハートで感じられるか、が大切だと思います。

 

 

◉未来を信じて

   今を手放す

 

「今作ったお花を片付けたくない!」
「ずっとこのままにしてほしい。」
R君は、そういった。

「君のその気持ちはわかるよ。 
でも、また、今度作れるよ!
今度は、今よりもっと綺麗に素敵なお花が作れるよ。
もっともっとたくさん、つくろうよ!」

うなづいた彼は、一緒にシルク布を綺麗に畳んでくれたのだった。


変化してゆくことに恐れを抱く気持ち。
今ある良いものを、固定してとどめておきたい気持ち。
それは、私の中にもある。

でも今日から明日へ、未来へと
流れる時の中で、
もっと良い瞬間が 未来から訪れることを信じて
「今この時」を手放し、前に進もうよ。

 

さよなら あんころもち またきなこ!