タイトル:雪国
著  者:川端康成
出版社 :新潮社
発売日 :2006年05月





 言わずと知れた文豪・川端康成の代表作。「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」という冒頭のフレーズは日本人なら誰もが一度は耳にしているはず。そうは言いつつも恥ずかしながら,僕は今回初めて読んだ。古典というものに興味を持ったのがここ数年であるという言い訳もあるが,なんとなくぱっとしない印象だったこともある。





 けれどもなぜ今回この作品を手にしたか。
 それは新潮社の新装丁が目に入ったから。それに尽きる。
 
 新潮社のシンプルレーベルのシリーズはこれまでも夏目漱石の『こころ』,太宰治の『人間失格』などと共に人気を博してきた。特に『雪国』はシルバーをあてがわれた。三島由紀夫の『金閣寺』の金と共に最も店頭で目に付く。ちなみに『こころ』が白であるが,黒はなぜか江戸川乱歩の短編集である。このシリーズは単色の表紙が人の目を引くし,また低く抑えられた価格設定は新潮社にとって赤字であることも有名だ。





 安くて目に付く本を買わせようという出版社,そして書店の戦略に見事にはまってしまっているが,なかなかどうしてこのシリーズは本好きの心を揺さぶる。本好きであることは読書好き,あるいは活字中毒といった表現とは似て非なるものだ。つまり,本を本棚に並べたいという気持ちだ。きれいな装丁の本はインテリアになりうるし,古い希少な本はアンティークだ。ただし僕は積読(ツンドク:本をジャケ買いして読まずに積んでおくこと)推進派ではないから読まずに放置してある本はそれほど多くはない。




 さて,末尾ではあるが『雪国』の内容にも多少触れておこうと思う。
 『雪国』は,一人の男が雪国の宿場にやってきて,手伝いの女,駒子と出会うというお話。解説によると枕草子や和歌などの系譜にある日本的な美観を発言しているとされるが・・・。逆に言えば枕草子や和歌に精通していない人はチンプンカンプンということではないだろうか。かく言う僕にも『雪国』のよさは微塵も伝わってこなかった,というお話。