「なぜ学校に行かなくてはいけないの?」
「どうして生きてきたの?」
など、素朴な疑問に、ノーベル賞作家の大江健三郎が
柔らかい言葉で答えた本。
深イイ本でした。
どの章もいいのですが、
ここでは「シンガポールのゴムマリ」という章が
私には迫るものがあったので、少し書いてみます。
「ゴムマリの購入券は、クラスでジャンケンをして、幸運にも私の手に入ったのでした。
この年の二月、日本軍はシンガポールを、イギリス軍と戦って占領していました。」
この年の二月、日本軍はシンガポールを占領していた・・・
この部分を読んで、
私は去年訪れたシンガポールでの出来事を思い出しました。
韓国留学中の夏休みに、私は初めてシンガポールを訪れ、
同じく韓国に留学をしていたシンガポールの学生が
私を案内してくれました。
案内をしてくれていた男の子が私に
「1942年の2月に何があったか知っている?」
と尋ねました。
本当に恥ずかしいことだけど、
私は、その年に何があったのか正確にわかりませんでした。
大江さんの本にもあるように、
その年は日本軍がイギリスと戦って、シンガポールを占領したんだね。
この男の子の言葉をきっかけに、
私は、ひとりシンガポールにある「バトルボックス」という場所を訪れました。
バトルボックスとは、戦時中の地下司令室のことで、
シンガポールのFort Canning Parkにあります。
昔の地下司令室を今は歴史を知る場所として公開しているわけです。
日本軍と英国軍の戦争を作戦司令室を通して再現してあり、
シンガポールから見た「日本」を知ることができる場所です。
大江さんの本を読んで、このときの出来事を思い出しました。
この年に何があったかを正確に知らなかった私と、
その年に小学校からゴムマリの購入券を得た大江健三郎さん。
(日本軍のシンガポールやマニラの占領により、
南洋諸島のゴム原料が豊かに入ってくるようになった。
だから、生徒全員ではないが、ジャンケンで選ばれた一人が
ゴムマリを買える権利を得た。それが大江さんだったというわけ。)
日本が外国を占領していたということを
大江さんという人の子供時代の思い出を知って、
さらにリアルに感じた。
この章で大江さんは、次のようにも書いている。
「世界地図のアジアのページを開いてみて、それらの国々まで日本の軍隊が攻め込んでいたのだということを、自分の目で確かめることは大切だと思います。」
このような話のほかに、
「『自分の木』の下で」
には、深い話が色々とあります。
大江健三郎「『自分の木』の下で」
この夏の読書課題として、ぜひお薦めいたします
ひとりニュースクリッピング。
7月20日朝刊
日経新聞「ヘルスケア 巨大化する医療産業(中)」
【概要】
上海万博の日本産業館。
そこで注目を集めるアトラクションの一つに、INAXのトイレがある。
表面は金色。座ると音楽が流れる最新式だ。
シャワートイレ最大手のTOTOには、用を足すと体温や尿糖値がわかる機種もある。
TOTOのシャワートイレの出荷台数は、5年間で約3倍に増えた。
清潔・健康という「日本らしさ」が世界に広がっている。
世界でトイレを使えない人々は、11億人。隠れた需要は膨大だ。
また、医療用ベッドも中国ウイグル自治区で売れている。
長寿世界一の日本。
医療観光先進国のタイでは、100万人強の観光客を受け入れている。
日本は、CTといった設備が充実しており、受け入れ余地が大いにあるはずだが、
推定1万人弱にとどまっている。
テルモが07年に欧州で販売を始めた磁気浮上方式の補助人工心臓。
評価は高いが、日本ではまだ販売されていない。
これは、日本での医療機器承認に2年弱かかるが、米国は約1年強。欧州はさらに早い。
日本メーカーですら軸足を欧米に置いている。
経済財政白書には、「環境・エネルギー、医療・介護などの分野で新たな産業や雇用を創出すべきだ」と提言しているが、成長を阻害する行政の壁を壊さなければならない。
インタビュー 上海万博日本産業館代表
・・・かゆいところに手が届く日本の独自技術は、必ず世界に通じる。しかし当の日本の評価が遅れるケースもある。非常にもったいないと感じている。・・・
【感想】
・スピードの問題。
就職活動の面接のときに、「日本と韓国の違いは?」という質問を受けたことがある。
その答えとして、「韓国にはスピード感がある。」という話をしていた。
これは、韓国人はせっかちな性格だという話もあるけれど、
企業活動の面からも言えることだ。
よく日本の企業は、決定のスピードが遅いと言われている。
医療機器の承認の期間にもそれが表れている。
・日本らしさの話。
しかし、スピードが速ければいいというほど単純な話でもないだろう。
日本には日本なりの「まめさ」や「正確さ」もある。
この記事では、「健康・清潔」が、長寿世界一の日本の「らしさ」であると書いている。
確かに、ソニーのウォークマンがアップルのアイポッドに代わり、
そしてアイフォンが快進撃を続けるのを見ていると、
「アイデア」という面では日本は負けてしまったといえる。
(だって、アイフォン使ってるけど、機械の質的には全然高いレベルじゃないと思う。)
「アイデア」のアメリカと「技術」の日本。
だけど、これに同じように高い技術を持った韓国製品も登場しているのだから、
日本もうかうかしていられない。
ちゃんと本当に「かゆいところに手が届く」製品をつくらないと、他に奪われてしまう。
(日本の製品は、変に技術だけ磨きに磨いて、実際の消費者のニーズとずれることがある。)
中国市場に力を入れるにしても、ちゃんと「中国の」ニーズをつかまないとですね。
7月20日朝刊
日経新聞「ヘルスケア 巨大化する医療産業(中)」
【概要】
上海万博の日本産業館。
そこで注目を集めるアトラクションの一つに、INAXのトイレがある。
表面は金色。座ると音楽が流れる最新式だ。
シャワートイレ最大手のTOTOには、用を足すと体温や尿糖値がわかる機種もある。
TOTOのシャワートイレの出荷台数は、5年間で約3倍に増えた。
清潔・健康という「日本らしさ」が世界に広がっている。
世界でトイレを使えない人々は、11億人。隠れた需要は膨大だ。
また、医療用ベッドも中国ウイグル自治区で売れている。
長寿世界一の日本。
医療観光先進国のタイでは、100万人強の観光客を受け入れている。
日本は、CTといった設備が充実しており、受け入れ余地が大いにあるはずだが、
推定1万人弱にとどまっている。
テルモが07年に欧州で販売を始めた磁気浮上方式の補助人工心臓。
評価は高いが、日本ではまだ販売されていない。
これは、日本での医療機器承認に2年弱かかるが、米国は約1年強。欧州はさらに早い。
日本メーカーですら軸足を欧米に置いている。
経済財政白書には、「環境・エネルギー、医療・介護などの分野で新たな産業や雇用を創出すべきだ」と提言しているが、成長を阻害する行政の壁を壊さなければならない。
インタビュー 上海万博日本産業館代表
・・・かゆいところに手が届く日本の独自技術は、必ず世界に通じる。しかし当の日本の評価が遅れるケースもある。非常にもったいないと感じている。・・・
【感想】
・スピードの問題。
就職活動の面接のときに、「日本と韓国の違いは?」という質問を受けたことがある。
その答えとして、「韓国にはスピード感がある。」という話をしていた。
これは、韓国人はせっかちな性格だという話もあるけれど、
企業活動の面からも言えることだ。
よく日本の企業は、決定のスピードが遅いと言われている。
医療機器の承認の期間にもそれが表れている。
・日本らしさの話。
しかし、スピードが速ければいいというほど単純な話でもないだろう。
日本には日本なりの「まめさ」や「正確さ」もある。
この記事では、「健康・清潔」が、長寿世界一の日本の「らしさ」であると書いている。
確かに、ソニーのウォークマンがアップルのアイポッドに代わり、
そしてアイフォンが快進撃を続けるのを見ていると、
「アイデア」という面では日本は負けてしまったといえる。
(だって、アイフォン使ってるけど、機械の質的には全然高いレベルじゃないと思う。)
「アイデア」のアメリカと「技術」の日本。
だけど、これに同じように高い技術を持った韓国製品も登場しているのだから、
日本もうかうかしていられない。
ちゃんと本当に「かゆいところに手が届く」製品をつくらないと、他に奪われてしまう。
(日本の製品は、変に技術だけ磨きに磨いて、実際の消費者のニーズとずれることがある。)
中国市場に力を入れるにしても、ちゃんと「中国の」ニーズをつかまないとですね。