然るべき手術を受ける意思がないのであれば、生来女性の人権に配慮するのは当然であり、生来女性が覚えるであろう違和感、恥辱感、恐怖感を研修で克服すべきとするのは理不尽極まりない。

現在、最高裁大法廷では、性同一性障害特例法が課している手術要件についての違憲審査が行われている。つまり、申立人は、戸籍上の性別を変える為に現在求められている性転換手術が違憲だと訴えているのだ。9月27日には申立人側の意見を聞く弁論が開かれ、公開されるという。申立人は、身体は男性だが性自認が女性の人物で、高額の手術費用や後遺症への不安を理由に性転換手術(精巣摘出手術)は受けていない。

 

私は手術要件を外すことに断固反対する。以下にその理由を述べる。

 

経産省職員の女性トイレ使用をめぐる裁判の判決に付加された裁判官の補足意見では、生来女性が覚える違和感は「トランスジェンダーに対する理解が必ずしも十分ではなく、研修により相当程度払拭できる」と主張されていた。我々は確かに「トランスジェンダーに対する理解が不十分であったこと」を素直に認めなければならないが、最大の間違いは、トランスジェンダーと性同一性障害を混同していたことだ。性自認という曖昧で主観的な概念の導入に反対することに集中するあまり、その基本的なポイントを見落としていたのだ。

 

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山岡鉄秀

情報戦略アナリスト。令和専攻塾塾頭。中央大学卒業後、モービル石油株式会社を経て、豪シドニー大学大学院、ニューサウスウエールズ大学大学院より修士号取得。豪州滞在中、現地コミュニティの支持を得て、「慰安婦像」設置阻止に成功した経験を機に日本の危機に目覚める。公益財団法人モラロジー道徳教育財団道徳科学研究所研究員。著書に『日本よ、もう謝るな! 』(飛鳥新社)、『日本よ、情報戦はこう戦え!』(育鵬社)など多数。

 

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