下町の生まれだった俺は、たぶんそのせいか、勢いのまんま、この歳まで来ちまったらしいや。

 

 目の前の、錆びた釘にぶら下がる枠もない鏡には、てめえの顔がかろうじて映っている。裏の銀塗りも剥げかけた所に素直さの素の字もねぇ長年の鬱積が溜まった目でよ、この国のやつらとは正反対の細っこい目が、てめえに嫌気がさしたようにやぶ睨んでいた。

 

 ついに流れ着いたのさ、このラオスという国。それがどこにあるのか、どんな国なのか、ちゃんと説明できる日本人はそうはいねぇし、はなっから興味を持つヤツもいねぇだろう。

 

 俺もアジアのどこかにある山国という印象しかなかったしな。だからここの高嶺の土が、野菜の有機栽培にはすげぇいいだなんて、知らなくても恥ずかしいことじゃねぇ。

 

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