最後の患者が帰り、診療所の扉をしめて外に出ようとした時、電話のベルが鳴りました。少し迷いましたが、電話を取ると、それは知り合いの西洋医からの電話でした。彼のところに動けなくなった急性腰捻挫の患者がいるので、私に手伝ってほしいと頼んで来ました。彼は、腰捻挫の治療が私の得意分野であることを知っていたのです。

 

 ジェニーに会った時、彼女は苦しそうにうめき声を上げていました。両手で椅子の手すりをつかみ、立ち上がれず座ることも出来ませんでした。少し動いただけで体に激痛が走ります。臨床でこのような患者を多く見て来た私は、直ちに彼女の人中のツボに針を入れました。彼女が何も知らないうちに、私はすでに針を刺したのです。そして、彼女に深呼吸を教えてから、1分も経たないうちに彼女は立ち上がれるようになりました。腰にまだ痛みはありましたが、気持ちは楽になったようです。針を刺したままで少し歩かせ、ふと彼女の顔を見ると、苦痛で緊張していた表情が随分リラックスしていました。

 

 針を取った後で、私は一般の臨床治療を始めました。彼女に痛い部位を尋ねて、腰を検査しようとしました。私の手が彼女の体にまだ触れていない時、ジェニーは大声で叫びました。まるで腰にナイフが刺さったような叫びです。手が上の方に止まったままの私を見て、彼女は「ごめんなさい、本当に申し訳ありませんでした」と謝りました。

 

【続き】

 

 

【関連記事】