米国の逡巡

 

NATO首脳会議で、結局ウクライナの加盟の時期は決まらなかった。NATOは集団防衛同盟であるから、戦時下にあるウクライナをNATOに加盟させれば、直ちにNATOとロシアの戦争へと発展せざるを得なくなる。ともに核兵器を保有しているから、全面核戦争になる公算大である。

 

それを避けるためには、戦争が終わったら加盟させるという約束しかできない。では、戦争は、いつ終わるのか?これがはっきりしない以上、加盟の時期を明言することは出来ないのである。

 

だが米国は水面下でウクライナから停戦の時期について言質を取っている。先に触れた6月のバーンズCIA長官のウクライナ訪問時に、年末までにロシアと停戦交渉に入ると、ゼレンスキー氏は明言したのだ。

 

クリミア半島の境界線まで奪還して」というのは、ウクライナの希望であって、米国にとっては実はどうでもいいことだ。米国は最悪の事態を避けるため、ロシアの動きを黙認するだろう。

 

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鍛冶俊樹

軍事ジャーナリスト。大学卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、11年にわたり情報通信関係の将校として勤務。著作に「領土の常識」(角川新書)、「2023年 台湾封鎖」(宝島社、共著)など。 「鍛冶俊樹の公式ブログ(https://ameblo.jp/karasu0429/)」で情報発信も行う。

 

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