奈良時代、河內国に利荊女という人がいました。彼女は幼い頃から心身が清らかで、悟性が高く、仏法を尊ぶ心を持っていました。彼女はいつも家で仏経を誦しましたが、行き来する人たちはみんな彼女の読経を聞くのを楽しんでいました。

 

利荊女は仏経を写すのが好きで、写した仏経が家にたくさんありました。しかしそのうちの三つの手写しの仏経がなくなり、どこにも見つかりません。利荊女は誰かに盗まれたと思いました。

 

ある日の夜、利荊女は何の病気もないのに突然死にました。その後、閻魔大王のところに行きました。閻魔大王は彼女を見ると、席から立ち、利荊女を席に着かせ、言いました。「あなたの仏経を読む時の声がとても美しいと聞いた。わしはあなたの読経の声を聞きたくてここに誘ったのじゃ」

 

利荊女は閻魔大王に仏経を読み聞かせました。読み終わると閻魔大王は席から立ち、お辞儀しながら「ほんとうに感動した」と言いました。三日後、閻魔大王は利荊女を人間の世界に戻らせることにしました。

 

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