「回眸一笑百媚生、六宮粉黛無顔色(眸をめぐらして一笑すれば百媚を生じ、六宮の紛黛顔色も無し)」

 

唐代の有名な長編詩『長恨歌』のなかで白居易(はくきょい)は、玄宗皇帝の寵愛を一身に受けた楊貴妃(ようきひ)の美貌をこのように絶賛しています。後宮三千人と謳われた美女のなかに絶世の美女である楊貴妃が現れると、化粧を凝らした他の女性たちは圧倒されて、全く色を失うほどであったと言います。

 

ここでいう粉黛(ふんたい)は、そのまま後宮の女性たちを指しますが、その華やかさは如何ばかりであったでしょうか。

 

粉黛とは、顔に施す白い粉である 「粉(おしろい)」 と、眉を黒々と描く「黛(まゆずみ)」の2種類を指す一般的な化粧品です。「粉黛」は人を若く見せることができ、容姿の印象を変える効果が非常に高いので、その言葉は美人の代名詞にもなり、歴代で最も基本的な基礎化粧品となったわけです。

 

化粧品による「美容の文化」は、かなり古い時代から始まっています。中国の戦国時代といえば紀元前5世紀から秦の統一に至るまでの長い時代ですが、その頃の詩句を集めた『楚辞』に「粉白黛黒(粉は白く、黛は黒い)」という語句が見えます。

 

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