第五話

 

 朝の早い鳥さえ寝ぼける頃合いに、笹船も動かぬ池に彼方の丘陵が黒々と映っていた。開発伐採された低い尾根の連なりから裸の土の匂いがする。すでに秋の気配だ。邦男は初めてUFOを目撃した場所に来ていた。

 

 探し物が見つからぬ苛立ちに、邦男はあせっていた。街ですれ違った知人達に、UFOはどうした? 宇宙人は? と野次られて、カッとなった後、誰にも言わずにここに来た。昨夜はいままでになく真剣に、徹夜で交信を試みたのだ。そのせいか、無性に体が重くてだるい。頭の奥にも鈍い痛みがあった。

 

 久しぶりにスミから離れてみて、彼女がむしょうに気になる。しかし町の人たちへの意地があった。宇宙人に会うか、少なくともUFOの写真くらいは撮って帰りたいのである。それがかなえば、もう、終わりにしてもいいと、そこまで考えてのことだった。

 昨夜は必死に首が痛くなるほど、天の川が見分けられるほど眺め続けたが、やはり何も起きはしなかった。寄る年波には人は勝てないのである。いつか首を垂れ、うとうとするばかりだったのだ。

 

【続き】

 

 

 

 

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