【続き】

 

  3. 「伝統復帰」の名のもとの洗脳

 

中国で数千年にわたり伝承されてきた伝統文化は、共産党政権が成立してまもなく、徹底的に破壊された。しかし、時が移り変わり、共産党自身も「伝統文化の復興」を叫ぶようになった。そこにはいくつかの理由がある。

 

第一に、マルクス主義的イデオロギーが行き詰まり、看板となる価値観を持ち合わせていない。米国大統領が中国を訪問する時には、有名大学で講演を行い、米国の普遍的価値観を中国の青年と分かち合っていたが、中国共産党指導者が訪米しても「共産主義」や「無神論」などの共産党文化を伝播することなどありえない。

 

第二は、共産党政権を維持する必要性に迫られたからである。階級闘争理念で育った国民は共産党政権にとって今や脅威となっている。共産党は国民を従わせるために伝統文化の中から「和をもって貴(とうと)しとなす」部分を切り出して大々的に宣伝しているに過ぎない。そして最後に、中国人の心の奥底にまだ伝統文化が存在していることが挙げられる。民間では文化のルーツを探し求める動きもあった。

 

これらのさまざまな要因が重なり合った結果、伝統文化を破壊してきた共産党もまた、伝統文化から活路を見いださなければならない境地に陥った。中国共産党の動機がどうであれ、中国伝統文化の持つ大きな力は否定できない。

 

1)破壊された伝統を復旧せずして「伝統復帰」を語れない

 

伝統復帰を語る前に、まず破壊された伝統の復旧をしなければならない。共産党政権が行ってきたさまざまな蛮行を反省し、清算し否定しなければ復旧とは言えない。知識人を束縛する無神論を破棄して初めて伝統文化の復興のスタートラインに立つのだ。中国の伝統文化は神が創造した半神文化であり、普遍的価値観である。無神論の立場からは、神への信仰に基づく伝統文化を理解することはできない。

 

したがって中国共産党の御用学者らは孔子や老子、お釈迦様が無神論者であったと証明しようと試みた。孔子の「論語」を曲解し、大衆は中国共産党の統治下で喜んで奴隷として生きるべきだと唱えた。そして聖人が説いた哲学理論を中国共産党の理論とつなぎ合わせ、低俗化させた。民間で起きた伝統復帰の動きがあっても、中国共産党の統治下においてはその統治の道具となり下がっている。

 

【続き】

 

 

 

【関連記事】