遠く離れた土地で長年商売をしていた人がいた。多く稼いだ彼は、そろそろ故郷に帰ろうと考えた。

 

 家に帰るには、とても危険な砂漠を通らなければならい。彼は貨を荷物として残し、食料を減らして荷物を軽くし、速く砂漠を抜け出ようと考えた。


 ところが、いざ砂漠に入ると、持っていたわずかな水と食料はすぐに尽きてしまった。金貨だけを背負ったが、思うように進めなくなり、水や食料を減らしたことを後悔した。それでも、絶えず自分を励ましながら、喉の渇きと空腹に耐えて歩き続けた。
 

 我慢も限界に近づいてきた頃、ラクダの鈴の音が聞こえた。列をなした商人たちだ。ラクダが運んでいる水を少し分けてほしいと彼が頼むと、商人は水に高い値段を付けた。砂漠では、水はとても貴重なのだ。彼は考え込んだ。今ここで水を買えば、砂漠を越えることはさほど難しくないだろう。しかし、長年かけて貯めてきた金貨を手放すのは惜しかった。「結構です。 水がなくても、喉の渇きさえ我慢すればこの砂漠から出られるから」と言うと、彼は荷物を背負い直して再び歩き始めた。それを聞いた商人たちは口々に、 「守銭奴だな。まだ長い道のりが残っているのに水なしで生きて帰れると思うなよ」と嘲り笑った。しかし、彼は聴く耳を持たずに歩き続けた。

 

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