「山の赤松、海辺の黒松」というのは、だいぶ大雑把な言い方かもしれない。

 

いずれにせよ日本人が大好きな松は、一木でも、あるいは群生していても、歌舞伎役者のような見事な姿を見せる希少な樹木であるといってよい。

 

「まつ」という和語の響きも耳に心地よい。声調も「待つ」と同じなので、天から神が降臨するのを待つように、何かを仰ぎ見る姿勢になるところも松が好まれる理由の一つであろう。

 

この樹木の名前がついた地名といえば、やはり日本三景の「松島」が筆頭に挙げられる。

 

日本は風景の豊かな美しい国である。例えば、静かな海面に浮かぶ多島美の風景を競わせてみれば、松島のみならず、瀬戸内も、英虞湾も、肥後の天草も、甲乙つけがたい美しさをもつだろう。

 

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