不幸な家庭環境で育った子どもたちが大人になると、健全な人間関係を築くことが困難になる。彼らは自分のために声をあげたり、だれかの行動を批判することをあまりにも危険だと感じている。そのため自分の経験を人に話すことを避けるようになる。
子どもたちは自分の居場所を見つけなければならない。居場所があることが生き延びるということなのだ。家庭で起こる惨事を公言してしまえば、世話をしてくれる家族や自分自身の生活を脅かすことになる。家庭が混乱している場合、一般的に子どもに興味を持ってくれる大人は周りにはいない。子どもたちが安心して話せる相手が周りにいないのが大半で、責任を持って事態を好転させてくれる人がいる可能性はさらに低い。
不安定な環境で育った子どもたちは、自分自身の安全を維持するために防衛能力を発達させる。簡単に言えば、大丈夫ではないことを大丈夫だと自分に言い聞かせられるようになる。彼らは不安や恐怖、怒り、そして絶望を隠す天才だ。どんなに辛くても、何事もなかったようにやり過ごしてしまう。そして次第に、普通ではない状態が当たり前になる。
この能力によって子ども時代に一定レベルの安全を保つことはできる。しかし大人になるとその効力を失い、不安や怒り、無力な気持ちに押しつぶされて身動きが取れなくなってしまう。子ども時代に閉じ込めた感情はまだそこにあり、これ以上隠すこともできなくなってしまうのだ。
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