彼岸(ひがん)とは、文字だけ見れば「向こう岸」という意味である。

 

彼岸は、日本の季節感を暦のなかにあてはめた雑節(ざっせつ)の一つで、春と秋にあり、昼夜の長さが同じになる日(春分・秋分)を挟む7日間ほどがその期間にあたる。

 

ただ日本語は便利なもので、その時期だけを指すときは「お彼岸」といい、人が死後に川をわたって行き着く場所は「彼岸」と呼び分けている。

 

仏教でも彼岸という。とくに日本仏教においては、平安期に隆盛した浄土信仰からくる影響がつよいため、死後に行けるとする極楽浄土への憧れを込めて、その場所をどこまでも美化して想像した。そこには、広々とした野に一面の花が咲き、生きている人間が有する一切の苦悩がない。なぜならそれは、阿弥陀如来が主催する世界だからである。

 

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