漢語では「燕子花」と書く。「杜若」の表記もあるが、こちらはカキツバタとは別種の植物らしい。
その花が燕の飛ぶ姿に似ていることから、この漢字が当てられた。さもあろう。漢語による事物への命名は「実際に見たもの」が優先される。
唐突ながら「象」という象形文字は、古代の中国人がゾウを見ていたから生まれたに違いない。実際、かつての中国大陸には豊かな森があり、ゾウもトラもワニも、人が見えるところに生息していた。
つまり「飛ぶツバメを見た」という体験的事実があって、はじめて「燕子花」という名称が生まれるのである。では、昔の中国人が、どの時季のツバメを最も印象深く見たかというと、おそらく初夏に南から飛来したツバメであろう。
【続き】