目次 

 

序文

1. 共産党文化

2. 共産主義による転覆―西洋の大衆文化

3. 大衆文化と社会の混乱
a. ヒップホップとロックンロール
b. 薬物乱用
c. ポルノ
d. ビデオゲーム
e. 暴力文化
f. 退廃的なファッション

結論

参考文献

 

 序文

 

神は人類を創造し、長い歴史を通して、人類が依りどころとすべき正統な文化を与えた。世界にはさまざまな文化が存在するが、その核となる部分は著しく似通っている。東洋でも西洋でも、すべての民族は美徳を重んじてきた。誠実、思いやり、寛容、正義、節度、謙虚、勇気、無私、これらは全世界の国家が敬意を表し、先祖代々、古典を通して継承してきた価値観である。これらの徳に共通するのは、神への敬慕と神の戒めに対する忠誠心である。なぜならば、人類が所有し体現すべき文化と道徳規範を与えたのは神だからである。これが、普遍的価値観の源である。

 

アメリカの建国の父たちは、道徳と倫理を大いに重んじた。ジョージ・ワシントンは大統領になるずっと以前、『交際と会話における礼儀正しさと行動規則』(Rules of Civility & Decent Behavior in Company and Conversation)と題する110の規定を個人的に出版した。【1】 細かな部分は時代と共に変更されているが、この規定には多くの普遍的な理念が含まれている。例えば、神や神に関する事を話す時は恭しくすること、道徳を維持すること、他人に敬意を払うこと、謙虚になること、他人に適切に対応すること、公共道徳に注意を払うこと、他人の感情や興味を害さないこと、いかなる場所でも礼儀正しく振る舞うこと、身なりを整え品格を示すこと、報復は避けること、陰で他人の悪口を言わないこと、他人の智慧や良い所から学ぶこと、自身の良心に従うこと、等々である。

 

同様に、ベンジャミン・フランクリン(Benjamin Franklin)が示した13の美徳は、節制、沈黙、秩序、決意、節約、勤勉、誠意、正義、節度、清潔、落ち着き、貞節、謙遜である。これらの理念は、ワシントンが示した110の規定と一致している。【2】

1950年代以前、一般の人々の道徳は、ほぼ共通の、それなりの基準に達していた。東洋でも西洋でも、人々は人類が持つべき伝統と習慣を維持していた。共産主義が中国の貴重な遺産を破壊し、エリートを虐殺し、系統的に道徳を堕落させた1949年以降も、共産党が権力を樹立するまでは、中国人の多くが伝統を守っていた。


共産陣営が拡大すると、共産主義はさらに戦略を展開した。1960年代以降、東洋でも西洋でも、人々の道徳は一瀉千里の勢いで滑落した。

 

1966年、共産党の文化大革命は「破四旧」と共に始まり、その後すぐにアメリカではカウンターカルチャー(対抗文化運動)と反伝統運動が起こった。若者を中心とするその運動は世界中に広がった。この世界的な社会運動の目的は、伝統を破壊し、長い間維持してきた道徳基準から人類を逸脱させることだった。

 

当時の政治的・文化的な運動は現代社会に深い傷跡を残している。中国の伝統文化が完全に破壊され、人々の道徳は急速に堕落した。欧米ではロック音楽、薬物乱用、性の解放、淫乱、同性愛、ヒッピー、精神的な空虚感が流行し、西洋の伝統文化に深刻なダメージを与えた。

 

カウンターカルチャーの真っただ中にいた過激な若者たちは、さらに社会に対抗するための方法を模索した。アバンギャルド芸術、文学、現代的イデオロギー、逸脱した概念などが流行し、人類は伝統文化と人間的な生活からますます遠ざかった。テレビ、パソコン、インターネット、携帯電話などのメディアが人類の放縦と堕落を加速させ、人々を迷宮へと引きずり込こんだ。

過去十数年の世界を観察すると、大衆文化に伴う人類の道徳の腐敗と堕落ぶりは目を見張るほどである。中国共産党は悠久の中国伝統文化を破壊した後、邪悪な「党文化」を作り上げた。この党文化で育った若者たちは、神が与えた伝統文化について全くの無知である。伝統を堅持し、誘惑や買収に屈しない一部の西洋社会を除き、共産主義は世界の人類文化を破壊することにほぼ成功したと言ってもいいだろう。

 

 1.共産党文化

 

1980年代の「改革開放」の後、海外に飛び出した中国人の行動は、しばしば外国人を驚かせた。当時、欧米人が持っていた中国人に対するイメージは、柔和で礼儀正しく、謙虚で親切、勤勉でシンプルというポジティブなものだった。しかし、十数年に渡る共産党の洗脳教育により、中国人は完全に変貌していた。彼らはマナーがなく、大声で話し、列に並ばず、公共の場で静かに待つこともできない。禁煙のサインがあっても平気でタバコを吸う。だらしない格好で道端にツバを吐き、ゴミを捨て、容易に人を利用する。

 

近年、中国人観光客の振る舞いは世界を驚かせている。文化遺産によじ登って傷つけたり、子どもが公共の場で用を足したり、トイレの水を流さなかったり、無料グッズを大量につかんだりする。カフェでは飲食物をムダにし、些細な事で大喧嘩したり、空港でトラブルを起こして飛行機の出発を遅らせたりするケースもある。


中国人に一体何が起きたのか? 中国大陸は一体どうなってしまったのか?

 

答えは簡単である。中国共産党が革命を発動し、伝統的な道徳、文明、マナーを維持している人々に「搾取階級」というレッテルを貼ったからだ。中国共産党はプロレタリアートの習慣を革命的で良いとみなし、泥だらけで手にタコができた人を知性的と評価した。身体のシラミを「革命の虫」と呼んだ。党のリーダーから一般の幹部までが得意げに罵り合った。そうすることで、彼らは階級意識が高く、革命に忠実であり、大衆に近いことを示した。

 

従って、共産党は人々に上品で文明的なものを放棄させ、代わりに粗悪な連中の生き方を認めさせた。悠久の歴史を有するかつての礼儀正しい大国は混乱に陥り、いまや名利のために人々が争う国になり下がった。中国は俗悪な集中キャンプに変貌し、共産党文化の見本市と化した。

 

人類を腐敗させるために共産党文化が造られたといってもいいだろう。「党文化」というのは、共産党の価値観に基づいた考え方、話し方、行動のことである。党文化を指導するイデオロギーは無神論と唯物主義であり、その中には党が注入した逸脱した文化や、古代の邪悪な部分を新たに作り直した要素も入っている。中国共産党は権力を掌握すると、さまざまな手法で伝統文化を破壊し、党文化を強化した。党文化に教育された中国人の考え方は、ますます変異した。

 

党文化の支配と浸透により、人生のすべての分野(文学、芸術、教育など)が堕落した。党文化は共産党のイデオロギーをそのまま体現している。無神論、闘争哲学、神の存在の否定、正義に対する不信。その代りに、党は天と戦い、地と戦い、人と戦う。邪悪な善悪の基準を植えつけ、人々の考えを歪める。この洗脳工作は、完全な国家テロによって行われる。党の支配下に置かれた人間は、誕生した時から党文化を見聞きし、気づかぬうちに影響を受ける。なぜならば、党がすべての資本を独占しているからだ。継続的に党のプロパガンダに晒された人々は共産党リーダーの作品を読むことを強制され、エリート層はせっせと党文化をさらに強化するテキスト、本、映画、ニュースを制作する。

 

共産党が中国人を変異させるのにかかった期間は、ほんの十数年である。中国人は党文化で思考し、党の言語で話し、神への信仰を捨て、結果を考えずに行動し、何でも大胆にやってしまう。ほぼすべての人間関係は欺瞞に満ち、悪事には限界がない。ゾンビのような(中身のない)党言語と、日常茶飯事の嘘に圧倒されるばかりである。

 

50年前、文化大革命の最中に党文化に染まった紅衛兵たちは、今や老年期である。彼らは当時身につけた悪習を、そのまま若い世代に伝えている。党文化に育てられた子どもや青年はずる賢く、海外の同年代より成熟している。年齢が若いにも関わらず、彼らは悪いことをすべて知っている。若者は神を信じず、不道徳で傲慢であり、性的な制約もない。気に入らないことがあれば、すぐに暴力に走る。彼らは無意識に、道徳の破壊に貢献している。伝統文化のルーツを失った中国人は、西洋で起こったカウンターカルチャーの最悪の部分をすべて吸収しているのだ。

 

党文化は中国人を普遍的価値観から遠く引き離した。中国人の心、考え方、行為は激変し、逸脱した。彼らは通常の家庭、社会、教育、職場などから遥かに逸脱しているため、外国人や非共産国出身の人々とは相容れない。

 

近年、中国共産党は伝統文化を復活させると宣言しているが、彼らが復活しているのは真の伝統文化ではない。彼らの言う「伝統」は単に外見だけであり、最も重要な中身が抜け落ちている。つまり、神への信仰である。党文化の誘導により、中国人の中には神々に金儲けを祈る者もいる。例えば、河北省易県にある人気の高い「奶奶廟」にはたくさんの神様がいて、どんな願いも聞き届けられるという。官僚になりたい者がいれば「官僚の神様」に、あるいは「裕福の神様」「勉強の神様」また車のハンドルを握る「自動車の神様」もいる。廟で働く人は、「お願いごとの種類に対して足りないと思ったので、(奶奶様を)どんどんつけ加えた」と説明している。【3】

 

現在、中国にも伝統を復活しようという動きがある。しかし、これほどまでに社会が腐敗している中で、伝統に回帰することはそんなに簡単なことだろうか? 古代の物語からインスピレーションを得た文学や芸術作品が制作されているが、その中身は現代的な観念で汚染されている。俳優は伝統的な衣服を身にまとっていても、演じているのは現代的なドラマである。つまり、伝統文化が単なる見せかけに留まり、真の伝統の意味が薄められている。例えば、最近では中国王朝の宮廷ドラマが流行っているが、中身といえば嫉妬と陰謀渦巻く人間関係ばかりである。それは闘争と憎悪を体現する共産主義そのものであり、歴史の真実を描写しているわけではない。

 

「西遊記」のリメイク版ドラマも同様である。古典小説の中で悪魔を退治する孫悟空が、なんと現代版では悪魔と恋に落ちてしまうのだ。さらに恐ろしいのは、中国伝統文化について無知な若者たちが、これを伝統だと思ってしまうことである。これが、党が中国の真の神伝文化を破壊した結果であり、十数年にわたって国民を党文化で教育してきた現実である。従って、中国人は闘争の精神が伝統であると信じ、芸術、文学、ドラマにも党文化が充満する。残念ながら、歴史の真実を描写しているのは古代の衣服だけである。

 

党文化は人々が神を信じないように仕向けるため、社会道徳が危機に瀕している。詐欺、偽造品、毒食品、汚職などは普遍的な現象である。いわゆる山寨とは、有名な外国ブランドのコピー商品のことで、盗み、欺瞞、模倣品、ニセモノという意味合いがある。この言葉はあまりにも流行したため、オックスフォードの中英辞典に加えられた。【4】

 

「山寨」は、商品だけに留まらず、店ごと真似るケースもある。偽物のアップルストアである。【5】 これらの偽物は、本物のアップルストアそっくりに装飾されている。ガラスの入り口、明るい木の展示テーブル、スチール製の階段の吹き抜け、iPadやその他アップル製品のポスター、さらにアップルの白いロゴが入ったおしゃれな壁。トレードマークの濃紺Tシャツを着た店員は、まるで本当のアップルストアに勤務しているかのようにふるまう。一部の中国人は、どんな悪ふざけも厭わず、金儲けのためなら何でもする。天罰を恐れず、嘘と偽造はすでに主流文化の一つとなった。もし中国で偽造品はダメだと忠告する者がいたら、異様な目で見られるだろう。

 

また、党文化は言語を破壊した。その中には、大げさな言葉やフレーズも含まれる。例えば「天中天」「皇中皇」「王中王」といった大仰なネーミングのレストラン。もったいぶった文体の小説。政府発信のニュースには「世界一」「歴史上最強」「米国は恐れている」「日本は愕然としている」「ヨーロッパは悔やんでいる」などの言葉が並ぶ。中国のソーシャルメディア微信(ウィーチャット)のニュースサイトも大げさなタイトルが目立つ。以下は、その典型的なタイトルである。「中国の科学技術は最強であり、米国を超えて世界一である」「中国はふたたび世界一を勝ち取った。アメリカの優良株を破り、完全にアップルをやっつけた」「何か大きな事が起こる。中国の魔法の武器がアメリカを恐れさせ、世界を驚かせ、日本を怖がらせる」「中国がまた別の分野で一位になった!歴史的な変革をたったの30年で達成し、アメリカ、日本、韓国を驚愕させた」「華為が世界初の5Gチップを発表し、世界に衝撃が走った!」

 

プロパガンダ映画「厉害了,我的国!」(仮題:素晴らしい、私の国)とそのテレビシリーズも誇張したトーンで描かれている。映画のメッセージは、まるで全世界が中国に平伏しているかのようである。大躍進の頃、イギリスとアメリカを追い越し、1エーカーあたり5万ポンド生産すると大口をたたいていたプロパガンダそのものである。

 

誇張する風潮はまさに「偽物、大げさ、虚言」を特徴とする党文化の体現であり、それがネット世代にありありと現れている。基本的には、これもモラルの問題である。1980~90年代の改革開放の頃、西洋から悪の文化が中国に流入した。性の解放、薬物乱用、同性愛、コンピューターゲームなどである。テレビの芸能番組はより下品になった。社会全体が物欲と性欲に溺れる快楽の都となった。

 

共産党は、中国人を人間以下のレベルにまで貶めた。共産党は、かつて文明が栄え、壮麗で美しかった中国を野蛮な国家に変貌させたのである。


【続き】