(上からの続き)

2.小学校と中学校に潜む共産主義の影
a. 学業の基準を下げる
b. 進歩主義教育の弊害
c. 教育:学生を甘やかす手法
d. 心理操作
e. 教育への浸透工作

3. 最終的なゴール:東洋と西洋における教育破壊

結論:伝統的な教育への回帰

参考文献

 

2. 小学校と中学校に潜む共産主義の影 

 

共産主義の影響が最も強いのは大学だが、小学校や中学校への浸透も深刻である。共産主義の影響で知的な成長や成熟を妨げられた子どもたちは、大学に進学した後、より左翼の影響を受けやすくなる。若い学生たちは徐々に知識を失い、判断力や客観的思考能力を失う。これが過去百年の過程である。アメリカの哲学者ジョン・デューイ(John Dewey)の進歩主義教育がこの潮流をつくり、後に続いた教育改革が同じ道をたどった。

 

学生たちは無神論、進化論、共産主義のイデオロギーを教え込まれた。アメリカの小学校と中学校では、伝統的な信仰と道徳を破壊する心理操作が行われた。道徳的相対論と現代的概念が教えられ、生命に対する歪んだ考えが注入された。これが、教育のあらゆる分野で適用された共産主義の手法である。そのやり方があまりにも巧妙であるため、人々がその流れを止めることは不可能だった。

 

a. 学業の基準を下げる

アメリカは民主国家である。大統領から国会議員、町長、学区の教育委員会までがすべて選挙によって選ばれる。民主政治が真に人々の利益になるよう機能するかどうかは、人々の道徳レベル、および知識と理解の程度による。もし、有権者が歴史を知らず、政治経済、社会問題について疎い人間だったらどうなるか。彼は、国や社会にとって長期的な利益となる候補者を選別できないだろう。これは国家を危険な状態にさらすことになる。

 

1983年、アメリカ教育庁の諮問機関が「危機に立つ国家」(A Nation at Risk)という報告書を発表した。

 

「われわれの国家が機能するには、市民が複雑な問題に対して、時に突然の知らせや矛盾すること、あるいは十分な証拠に基づかないことであっても、ある程度の共通認識に到達しなければならない。教育が、この共通認識を形成するのを助けてくれる。トーマス・ジェファーソンの有名な格言にあるように『社会の究極の力を蓄えておく安全な場は、国民以外には考えられない。そして、もしその国民が健全な良識をもって、これを自由に操作するほど啓発されていないと思われる場合には、国民に操作させないのではなく、教育によって国民の良識を育てることが、その対応策である』」知識が浅く、論理的思考に乏しい人間は、虚偽や嘘を見抜くことができない。そのため、教育が非常に重要な役割を果たす。共産主義が教育のあらゆるレベルに浸透し、愚鈍で無知な生徒を育てるのは、彼らを操りやすくするためである。

 

報告書にはまた、次のように書かれている。「われわれの社会の教育システムは、現在、凡人の上昇によって浸食されている。それが国家や人々として、われわれ自身の将来を脅かしている」「もし友好的ではない外国勢力が、今日のアメリカにある二流教育を押し付けようとしていたなら、われわれはそれを戦争行為とみるべきだった」「われわれは、スプートニク・ショックの余波の中で、学生たちが成し遂げた利益を無駄にしてしまった。さらに、われわれはその利益を可能にするような、大事な支援制度を廃止した。われわれは、実際に、軽率な、一方的な、教育の軍縮にあたる行為を働いてきたのである」【1】

 

報告書は、分析家のポール・コッパーマン(Paul Copperman)の言葉も引用している。「わが国家の歴史上初めて、一世代の学力が、その両親の世代を超えず、同等でもなく、接近することもなくなった」報告書はさらに、衝撃的な調査結果を伝えている。アメリカの学生の成績が世界水準の底辺であるだけでなく、2300万人のアメリカの成人が機能的非識字であるという。つまり、彼らは読み書きする若干の能力があっても、現代の複雑な生活や仕事をこなすだけの水準に至らないのである。17歳の機能的非識字率は13%で、マイノリティーでは40%に跳ね上がる。1963~80年にかけて、SAT(大学進学適正試験)の成績は落ち込み、国語の平均点は50点、数学は40点下落した。「17歳の多くが、われわれが期待する高次解析の知的能力を持たない。40%近い子どもたちが、文章をもとに推論する能力がない。5分の1の生徒のみが、説得力のある作文を書くことができ、3分の1の生徒が、いくつかのステップを踏む数学の問題が解ける」【2】

 

1980年代以降、アメリカの教育に疑問を持つ人々が「基本に立ち返る」(Back to Basics)キャンペーンを行ったが、教育制度の後退を食い止めることができただろうか? 2008年、エモリー大学のマーク・バウアーライン(Mark Bauerlein)が『もっともバカな世代』(The Dumbest Generation)を執筆した。第一章によると、教育省と非政府組織(NGO)がまとめた調査で、アメリカの学生の歴史、公民、数学、科学、テクノロジー、美術などの知識に大きな差があるという。2001年に行われたNEPA(National Education Progress Assessment)という試験では、57%の学生の歴史の成績が「基礎以下」であり、「上級」に達したのは、たったの1%だった。第二次世界大戦時における米国連合軍の国を問う問題では、驚くことに52%がソ連の代わりに、ドイツ、日本、イタリアと答えたのである。他の教科の成績も惨憺たるものだった。【3】

 

【続き】