「~のN」 (付加詞性)
「~のN」はPPの付加詞性を確認するテストになりうる。
●「~によって」と「~に」
Fukuda (2005, (26a-b))
・[NP 敵によっての攻撃]
・*[NP 敵にの攻撃]
References
Fukuda, Shin-Ichiro (2005) "Japanese Passives as aising/Control/ECM," talk presented at the 3rd International Workshop on Theoretical East Asian Linguistics, Harvard University.
「~だけ」 (作用域)
「~だけ」は、他の量化要素等に対して広い/狭いスコープをとりうる。
●「~だけ」と受身
Terada (1990), Fukuda (2005, (24))
・けいこが お気に入りの犬だけに 逃げられた。
only > pass: 他の犬も逃げたが、お気に入りの犬のことだけがつらい。
pass > only: お気に入りの犬だけが逃げて、それはつらい。
Terada -- *only > pass / pass > only
Fukuda -- only > pass / *pass > only
References
Fukuda, Shin-Ichiro (2005) "Japanese Passives as aising/Control/ECM," talk presented at the 3rd International Workshop on Theoretical East Asian Linguistics, Harvard University.
Terada, Michiko (1990) Incorporation and Argument Structure in Japanese, Doctoral Dissertation, University of Massachusetts, Amherst.
命令文
命令文は、主語が意図をもったものである場合に可能であることが多い。
命令文が作れるか否かで動詞の種類を分けることがあるが、
実際の分類に対してその部分集合を指定している点に注意が必要である。
●非対格動詞 vs. 非能格動詞
・??Exist here!
・Come here!
・Run here!
・Bleed here ??(for your country)!
●繰り上げ動詞コントロール動詞
・*Seem to be great!
・Try to be great!
Fukuda (2005, (19a-b))
・??/*馬によって蹴られろ!
・馬に蹴られろ!
References
Fukuda, Shin-Ichiro (2005) "Japanese Passives as aising/Control/ECM," talk presented at the 3rd International Workshop on Theoretical East Asian Linguistics, Harvard University.
英語:Imperatives
中国語(簡):祈使句
中国語(繁):祈使句/命令式
韓国語:명령문 (命令文)
主語の選択制限 (繰上げ VS コントロール)
●繰り上げ1項述語は、主語位置に対して選択制限を課さない。
一方、コントロール1項述語は主語の選択制限がある。
・The book seemed [the book to be good].
・#The book tried [the book/PRO to be good].
●日本語の受動文にもこの違いが見られうる。
Fukuda (2005 (12a-c),(13a-c),(37a-c))
・??開会が市長に宣言された。
・??大会が市長に開会を宣言された。
・開会が市長によって宣言された。
・[社長が辞めること]が会社によって発表された。
・*[社長が辞めること]が会社に発表された。
・*[社長が辞めること]が会社にその事実を発表された。
・気象学者が 台風の目を 発見した。
・台風の目が 気象学者によって 発見された。
・*台風が 気象学者によって ti 目を 発見された。
※「台風が気象学者に目を発見された」の方が、
議論の流れとしては妥当かと思われる。
●中国語の受動文は、長距離・短距離受動を問わず
主語に意図性が認められる。
Huang (1999, (6-7))
・張三故意被打了。张三故意被打了。
・張三故意被李四打了。张三故意被李四打了。
●受動文主語の意図性は、英語のbe受動・get受動の対比に相当。
Huang (1999, (8a-b),(9a-b))
・*The pedestrian was hit deliberately.
・The pedestrian got hit deliberately.
・*Rodman was fouled by Ewing on purpose.
・Rodman got fouled by Ewing on purpose.
References
Fukuda, Shin-Ichiro (2005) "Japanese Passives as Raising/Control/ECM," talk presented at the 3rd International Workshop on Theoretical East Asian Linguistics, Harvard University.
Huang, C.-T. James (1999) "Chinese Passives in Comparative Perspective," Tsing Hua Journal of Chinese Studies 29, 423-509.
イディオム表現 (繰上げ VS コントロール)
イディオム表現は、多くが[動詞+別要素]の形式であり、
一まとめで何らかの意味を表す。
イディオムに何らかの統語的操作を加えた場合、
イディオムとしての意味が消失することもある。
●繰り上げ構造はイディオムを崩さないが、コントロール構造は崩す。
Fukuda (2005, (14a-d))
・会社が 新しい戦略を とった。
・新しい戦略が 会社によって とられた。
・??新しい戦略が 会社に とられた。
・会社が 競争相手に 新しい戦略を とられた。
References
Fukuda, Shin-Ichiro (2005) "Japanese Passives as Raising/Control/ECM," talk presented at the 3rd International Workshop on Theoretical East Asian Linguistics, Harvard University.
「自分」 (主語性)
日本語の「自分」は、それをc-commandする主語と同一指示になりうる。
●複数の主語と同一指示が可能な場合、解釈は多義的。
Fukuda (2005, (10a-c))
・たけしi が [じろうj に 自分i/j の部屋で 泣か]れた
・たけしi が [じろうj に 自分i/*j の部屋で 殴ら]れた
・男i が [何者かj によって 自分i/*j の部屋で 襲わ]れた
●ある述語の主語が、所有者繰上げで移動したものか、基底生成したものかを
判定するテストとして、「自分」が容認されるか否かが用いられる。
繰り上がった所有者主語は「自分」を認可しない。
Fukuda (2005, (34a-d),(36a))
・田中さんに 子供が いる。
・田中さんが 背が 高い。
・田中i さんに 自分i の 子供が いる。
・*田中i さんが 自分i の 背が 高い。
・太郎iが 花子に 自分iの足を 蹴られた。
●中国語の「自己」も同様に主語志向。
Huang (1999, (15-17))
・張三i 被李四j 關在自己i/j 的家裡。张三i 被李四j 关在自己i/j 的家里。
・那封信被李四帶回自己的家去了。那封信被李四带回自己的家去了。
・那本書被李四請自己的朋友拿走了。那本书被李四请自己的朋友拿走了。
References
Fukuda, Shin-Ichiro (2005) "Japanese Passives as Raising/Control/ECM," talk presented at the 3rd International Workshop on Theoretical East Asian Linguistics, Harvard University.
Huang, C.-T. James (1999) "Chinese Passives in Comparative Perspective," Tsing Hua Journal of Chinese Studies 29, 423-509.
結果述語 (内項性)
結果構文の結果句(結果述語)は、動詞の内項と主述関係にある。
●外項とは主述関係をなさないが、非対格動詞の主語は内項なのでOK。
Fukuda (2005, (7a-b))
・たけしi が けんじの顔jを 真っ黒*i/j に 塗った。
・けんじの顔i が たけしj {に/によって} 真っ黒i/*j に 塗られた。
References
Fukuda, Shin-Ichiro (2005) "Japanese Passives as Raising/Control/ECM," talk presented at the 3rd International Workshop on Theoretical East Asian Linguistics, Harvard University.
遊離数量詞 (一部:主語性)
遊離数量詞は、関連する名詞句と相互c-command関係になければならない。
これを逆に利用すると、(遊離数量詞が移動しないと仮定すれば)
関連する名詞句の基底生成位置も判明する。
●遊離数量詞と名詞句の間に別の要素が介在してはいけない。
Fukuda (2005, (6a-c))
・友達i が 三人i/*j パーティーに 子供j を 連れてきた。
・友達i が パーティーに 子供j を 三人*i/j 連れてきた。
・*子供i が 今日 本j を 三人i 読んだ。
●ただし、関連する名詞句が移動している場合は、その限りではない。
Fukuda (2005, (6d))
・子供i が 何者かj {に/によって} 三人i/*j 誘拐された。
●間接受動の「に」句は遊離数量詞と関連付けることが可能。
Fukuda (2005, (9a-c))
・その男は 子供i に みんなi 死なれた。
・??たけしが 先生i に 三人i 褒められた。
・??たけしが 医師i によって 三人i 検査された。
●名詞修飾数量詞(nominal quantifier)は、原則として修飾する名詞と
隣接していなければならない。しかし、目的語に対するNQは
主語が介在してもよいが、主語に対するNQは目的語が介在してはならない。
黒田 (1980:27)
・イギリス人が打ち出の小槌を二つ買った。
・打ち出の小槌をイギリス人が二つ買った。
・イギリス人が三人打ち出の小槌を買った。
・*イギリス人が打ち出の小槌を三人買った。
・[打ち出の小槌]iを[イギリス人が ti 二つ買った]
References
Fukuda, Shin-Ichiro (2005) "Japanese Passives as Raising/Control/ECM," talk presented at the 3rd International Workshop on Theoretical East Asian Linguistics, Harvard University.
黒田成幸 (1980) 「文法比較」, 國廣哲彌(編) 『日英語比較講座 第2巻 文法』, 23-62, 大修館, 東京.
日本語の受動文
日本語の受動文には3タイプあるといわれている。
・直接受動 [太郎が次郎に叩かれた]
・「によって」受動 [太郎が次郎によって叩かれた]
・間接受動 [太郎が次郎に頭を叩かれた]
以下、Fukuda (2005)に従ってこれらの特徴をみていく。
<直接受動と「によって」受動共通の特徴>
●直接受動と「によって」受動は、主語がもともと目的語である。
そのため、受動文の目的語位置は原則として空である。
Fukuda (2005, (5a-b))
・たけしが警官に{*自分を/*彼を}止められた。
・たけしが警官によって{*自分を/*彼を}止められた。
●遊離数量詞と関連する名詞句は基底位置で相互c-comamndの関係。
直接受動と「によって」受動は、「に/によって」句に隔てられても数量詞と主語が
関連する解釈を示すから、主語は数量詞と相互c-commandできる位置から
移動したと考えるのが妥当である。
cf. Fukuda (2005, (6d))
・何者かj が [子供j を 三人j/*j] 誘拐した。
・子供j が何者かj {に/によって}[tj 三人i/*j] 誘拐された。
●結果構文の結果述語は内項とのみ主述関係をなすといわれるが、
直接受動・「によって」受動の主語も結果述語と主述関係にある。
Fukuda (2005, (7b))
・けんじの顔j がたけしj {に/によって}真っ黒i/*j に塗られた。
<間接受動特有の特徴>
●自動詞からも受動化が可能だし、他動詞からの受動は目的語が残る。
高見 (2000, (13b)), Fukuda (2005, (8a-b))
・従業員に倒れられて、仕事の手が足りない。
・たけしが息子に一晩中泣かれた。
・たけしが泥棒にステレオを盗まれた。
●「に」句は主語性を示す[遊離数量詞と関連し、自分と同一指示]。
Fukuda (2005, (9a-c),(10a-c))
・その男は子供j にみんなj 死なれた。
・??たけしが先生j に三人j 褒められた。
・??たけしが医師j によって三人j 検査された。
・たけしj が次郎j に自分i/j の部屋で泣かれた。
・たけしj が次郎j に自分i/*j の部屋で殴られた。
・男j が何者かj によって自分i/*j の部屋で襲われた。
<「によって」受動特有の特徴>
●動作を成すものが「によって」句によって標示される。
Fukuda (2005 (11a-c))
・たけしが警官に止められた。
・たけしが警官によって止められた。
・たけしが泥棒にステレオを盗まれた。
●「影響を受けない主語」を容認する。
Fukuda (2005 (12a-c),(13a-c))
・??開会が市長に宣言された。
・??大会が市長に開会を宣言された。
・開会が市長によって宣言された。
・[社長が辞めること]が会社によって発表された。
・*[社長が辞めること]が会社に発表された。
・*[社長が辞めること]が会社にその事実を発表された。
<直接受動特有の特徴>
●イディオム表現が意味を失う。
Fukuda (2005, (14a-c))
・新しい戦略が会社によってとられた。
・新しい戦略が会社にとられた。
・会社が競争相手に新しい戦略をとられた。
<直接受動と「によって」受動の違い>
●再構築効果の有無
Fukuda (2005, (15a-b))
・三人の学生が伊藤先生によって毎回指された。(3>∀, ∀>3)
・三人の学生が伊藤先生に毎回指された。(3>∀, *∀>3)
※3>∀は、決まった3人の学生がいて、毎回必ず指名されたという解釈。
∀>3は、授業の各回で異なる3人が指名されうるという解釈。
●それぞれの派生
Fukuda (2005, (25a-c))
・直接:[passP DPi [pass' [ApplP DP-ni [Appl' [VP tj V] Appl]] pass<+Θ, -CASE>]]
・によって:[passP DPj [pass' [VP DP-niyotte [VP tj V] pass<-Θ, -CASE>]]
・間接:[passP DP [pass' [vP DP-DAT [v' [VP DP V] v]] pass<+Θ, +CASE>]]
●NP移動
直接受動と「によって」受動は、表層主語がNP移動によって派生されたもの。
しかし、Fukuda (2005)は、前者がコントロール、後者が繰り上げだとしている。
●繰上げとコントロールの違いとは?
繰り上げもコントロールも、「名詞句と空範疇が同一指示」という点で共通。
しかし、前者は移動によって痕跡(あるいはコピー)を残すのに対し、
後者はある種別々の名詞句が同一指示となっているもの(非移動分析)。
前者は同一の名詞句が別々の位置を占めると言えるのに対し、
後者は別々の名詞句がそれぞれの位置を占めていると言える。
θ役割付与に関して言うと、繰上げはひとつの名詞句の移動なので
ただ1つしかθ役割をもらえないが、コントロールは二つの名詞句があるために
それぞれ別々のθ役割をもらうことができる。
これは、コントロールを移動分析で捉えてもその精神は一貫しており、
名詞句は移動元位置と移動先の位置でそれぞれθ役割をもらう。
●直接受動と「によって」受動
直接受動では、動詞の内項がV補部でθ役割をもらい、
さらにSpec-Passでθ役割をもらう(コントロール)。
「によって」受動では、動詞の内項はV補部でθ役割をもらうが、
Spec-Passではθ役割をもらわない(繰上げ)。
●VPかvPか
間接受動特有の特徴として、「に」句が主語性を有することが挙げられる。
この受動形式には「が」で標示されうる別の主語もあるから、
主語が二つあるということになり、
それぞれが別々の節に属すると仮定するのが自然である。
Fukuda (2005)の分析では、PassPの中にvPが埋め込まれている。
vPは独立して主語を擁しうるから、理論上の齟齬はない。
また、間接受動の場合、Pass主要部が「に」句を認可する。
節の境界を越えて構造格を付与しているので、いわゆるECMである。
●「に/によって」句について
直接受動と間接受動の「に」句はある述語の項、
「によって」受動の「によって」句はVPに対する付加詞である。
References
Fukuda, Shin-Ichiro (2005) "Japanese Passives as Raising/Control/ECM," talk presented at the 3rd International Workshop on Theoretical East Asian Linguistics, Harvard University.
Fukuda, Shin-Ichiro (2006) "Japanese Passives, External Arguments, and Structural Case," in Beecher, Henry, Shin Fukuda, and Hanna Rohde (eds.) San Diego Linguistics Papers 2. 85-133.
高見健一 (2000) 「被害受身文と『~にVしてもらう』構文-機能的分析-」、『神田外語大学COE 2000年研究報告書』、187-210.
他動詞虚辞構文 (TEC)
他動詞虚辞構文(Transitive Expletive Constructions; TEC)は、
虚辞構文に他動詞が生じたもので、これを許す言語と許さない言語とがある。
●許さない言語
Bowers (2002, (27a-c))
・*There has someone eaten an apple. (英語)
・*Der har nogen spist et æble. (デンマーク語)
・*Daar het baie mense baie bier gedrink. (アフリカーンス語)
●許す言語
Bowers (2002, (28a-c))
・Það hafa margir jólasveinar borðað búðing. (アイスランド語)
・Es essen einige Mäuse Käse in der Küche. (ドイツ語)
・Er hat iemand een appel gegeten. (オランダ語語)
アイスランド語の例がETC全体を代表していると仮定する。
●アイスランド語には目的語転移があり、動詞修飾副詞との位置関係で明らかになる。
主語は転移した目的語をc-commandする位置になければならず、
虚辞þaðはさらにそれをc-commandする位置になければならないから、
虚辞はSpec-Cに併合するのではないかと考えられる。
Bowers (2002, (29a-b); my emphases)
・Það kláruðu margar mys alveg ostinn.
・Það kláruðu margar mys ostinn alveg.
●虚辞の併合する位置の違いから、
存在文の語順とECM補部での容認性が説明できる。
Bowers (2002, (31a-c),(32a-b),(33a-b))
・There (might) seem to be mice in the cupboard.
・*There (might) seem mice to be in the cupboard.
・*There (might) mice seem to be in the cupboard.
・Það virðast [TP margir menn virðast [PrP margir menn virðast [VP virðast [TP margir menn vera í herberginu]]]].
・Það höfdu [TP margir menn höfdu [PrP margir menn virst [VP virst [TP margir menn vera í herberginu]]]]
・*Ég hafði talið [TP það vera villu í essu handriti].
・Ég hafði talið [TP vera villu í essu handriti].
References
Bowers, John (2002) "Transitivity," Linguistic Inquiry 33, 183-224.