*ネタバレ注意
はじめに日本の死刑制度について深く考えさせられた。
加害者は被害者自身やその遺族のために死をもって償うべきと考えられる。
犯罪がニュースなどに取り上げられれば、メディアや世間は死刑にすべきと囃し立てることだろう。
しかし、死刑にするかの基準は人間の感情に左右されることが大きい。
例えば、同じ殺人でも遺族もいない孤独な加害者と遺族のいる既婚者では、後者のほうが遺族感情というものに流され、同情の余地があると世間一般的にも認められるだろう。
また、殺人を犯したのが未成年か成人かでも世間の見方は変わるだろう。
同じ命が失われたことには変わりはないし、そこに遺族感情があるか世間が騒ぐかは関係のないことである。
しかし、現実ではこのような感情が判決に与える影響が大きい。
これでは常に判断の基準が曖昧になり、命が軽視されることにも繋がりかねない。
遺族にも寄り添うべきであるが同時に命にも寄り添わなければならない。
現代社会は、物質的な豊かさよりも心の豊かさを重視している人が多いのではないか。
衣食住に困らない暮らしをしようと思えば、多くの人が実現できる。
しかし、今や私たちはただ生きるだけでは満足できない。
仕事にやりがいを求め、趣味を求め、人間関係の充実や社会との繋がりを強く求める。
贅沢な時代であるが、幸福を感じづらい世の中であると考えられる。
本書に登場する人物たちは、幸せとは何か、自分という人間は何か真剣に悩み、葛藤したが、それを見つけることができなかったのであろう。
何もかも憂鬱な夜はあるかもしれないが、社会に呑まれてはならない。
