京都大学名誉教授の今中忠行氏が、水と二酸化炭素から常温で石油を製造する方法を開発したと、ネット上で話題になっています。
もし本当なら素晴らしい発明なんですけれどねえ・・・・。
以下スクショ。
ポイントは「ラジカル水」なるものにあるようですが、これがどんなものなのかは素人の私にはわかりません。まあ、水と二酸化炭素を重合させて炭化水素をつくるための触媒の働きをするものだと理解します。
しかし、私にはいくつか疑問があるんですよ。私は科学理論に関しては保守的ですから、従来の理論をまるきり覆すようなものには極めて慎重なんです。
一番問題なのは、「ネット上の批判」にもありましたが、今中氏がエネルギー保存則に反するような発言をしている点です。
今、最も簡単な炭化水素であるメタンを燃焼させたときの熱化学方程式を挙げてみます。
CH₄+2O₂=CO₂+2H₂O+890kJ/mol
メタンの燃焼によって1モルあたり890kJのエネルギーが得られたわけですが、逆に二酸化炭素と水からメタンと酸素を生成しようとすれば、当然890kJ以上のエネルギーを要することになります。
いくら効率の良い触媒を使ったところで、この値が小さくなるわけではありません。一体、そのエネルギーをどこから得ようというのでしょうか?
もし光合成と同様に光エネルギーを使うのだとすれば、確かにタダではありましょうが、その場合、私は現今の太陽光パネルの悪夢を想起してしまうのです。
今中氏は、動画で原子核が関与する反応ではエネルギー保存則が成り立たなくなる、というような<トンデモナイこと>を発言しています。この部分、字幕にないので、エッセンスだけ文字起こしをしてみました。
原子爆弾にエネルギー保存則が成り立っていると思います? E=mC²からも分かるように原子核を構成する物質が変化したら、エネルギー保存則とは別の世界と考えてもらった方がいい。
「おい!」と言いたいですね。私が学生だったら失礼を顧みず口から出たかも知れません。
E=mC²というのは、質量はエネルギーと等価交換し得るということを示しただけの式で、決してエネルギー保存則を否定したものではありません。たとえ原子核反応でも、エネルギー保存則は立派に成り立っているのです。
第一、このちゃちな装置に核反応が関与しているとでもいうんですかねえ(笑)。
・・・・というようなわけで、正直なところ、私には今中氏の所論が極めて胡散臭いものに思われてならないのです。
ネット上のコメントのほとんどは、素晴らしい発明だと称賛するものばかりでしたが、こういう反応って、アレに似てません?
画期的な枠珍が発明されたぞ!
わーいわーい、我も我も!
ちょっと冷静になって、成り行きを見定めた方がいいんじゃありませんかねえ。