「亮二、あがっていい?」
小雪が僕をじっと見ながら聞いてきた。
「えっ!?えっと・・・」
(まずい。非常にまずい状況だ。居候とはいえ、女の子と家で同居していることがばれたら取り返しのつかんいことに・・・)
「何か隠してる?」
小雪が眉間にしわを寄せながらじっと僕の目を見つめてきた。
(完全に手詰まりだ・・・。)
「ん?靴が3足・・・家に誰かいるの?」
(しまったっ!)
「えっ・・・え~っと・・・それは・・・」
何とかしてごまかそうとしたその時、
「亮二くぅ~ん?どうかしたのぉ~?」
天使さんがてくてくと現れた。
(あぁっちょっ天使さあああああん!?)
天使さんを見た小雪はすこし驚いた顔をしながら
「・・・誰?」
と、言った。
「あら、お客さん?」
天使さんはゆっくりとした口調で尋ねてきた。
「亮二・・・ゆっくり話を聞かせてもらうから。」
小雪は状況を飲み込むと眉間にしわを寄せながら少し怒った口調で言った。
「は、はい・・・」
僕はしぶしぶ返事をした。
その返事を聞いて小雪は家へ上がり、リビングのドアを開けた。
するとそこには晩ご飯をもくもくと食べる明菜がいた。」
「!?・・・もう一人!?」
小雪は唖然としていた。
「ん?客か?」
明菜がご飯を食べながら言った。
「えっと・・・小雪さん?じ、事情はちゃんと説明しますんで・・・」
おそるおそるそう話しかけると
「うん・・・そうしてもらう・・」
と、小雪は静かに答えた。
(やばい・・・完全に怒ってる・・・。)今夜は長い夜になりそうだ・・・僕は覚悟をした・・・。
●
「つまり、天使さんと明菜ちゃんはただの居候なのね。」
小雪は落ち着いた口調で尋ねてきた。
「は、はい。そうです・・・。」
僕はなぜか正座をさせられながら答えた。
小雪を納得させるのに3時間弱かかった。
もう明菜は寝てしまい、天使さんはお風呂に入っている。
「そ、そういえば、どうして家出なんてしたんだ?」
少しの間、沈黙が続いていたので何か会話をしようと気に なっていたそのことを尋ねてみた。
「そ、それは・・・その・・・お父さんと喧嘩をした の・・・」
うつむき加減で小雪は答えた。
「どうしてまた?」
小雪の家といえばここらではとても有名な旅館だ。
何度か小雪が旅館の手伝いをしているところを見たことあるが、彼女はいつも楽しそうに仕事をしていたし、彼女の親たちだって優しい人たちだ。
それなのになぜ喧嘩してしまい家でまでしたのか僕はすごく気になった。
「もう・・・縛られるのは、イヤだから・・・」
小雪は辛そうな声で答えた。
「え・・・。よし、もう寝よう。とりあえずほとぼりが冷めるまで泊めてやるから、今日はもう寝よう。」
小雪の言葉は気になったが、これ以上は聞くのはやめといたほうがいいと思い、とりあえず今日のところは寝ることにした。
「・・・うん。」
小雪はコクンとうなずくと荷物の中から布団を出し、敷き始めた。
小雪に何があったのか、できることなら彼女に協力してあげたい・・・。
その夜は僕はなかなか寝付けなかった。