「で、王国には3つの武術組織があるの」


あの後。

わたしはエスメラルダから、エルネアの基本情報を教えてもらっていた。


今話しているのは武術組織だ。


「入国した以上把握していないといけない大事な情報だから、聞き逃さないようにね。」

「分かった」

「じゃあまずは……」


エスメラルダは首を斜め後ろに向けるとまわりを見渡し始めた。

そして、その人の名前を大声で呼んだ。


「ダイゾーさん!」

「ん。なんだエスメラルダじゃないか」


反応したのは、噴水広場に入ってきた男性。鎧のようなものを着ている。


「マリア。この人はダイゾー・コロミナスさん。ローゼル近衛騎士隊所属の騎士さんよ」

「友達か?どうも」

「は、はじめまして

「ダイゾーさん。今お時間ある?」

「あああるぞ」


その後、ダイゾーさんという方は近衛騎士隊について詳しく教えて下さった。

ローゼル近衛騎士隊は毛織物の製造、北の森の巡回及び魔物討伐を主に活動しているらしい。武器は剣。


「ま、入隊するとしたら再来年だけどな」

「え?」

「来年は白夜の年なんだよ。その年は武術組織の入隊試験は行われないんだ」


そうなんだ……。再来年……。再来年か……。その年、わたしはきっとエルネアにはいない。ウィアラさんから言われていた。滞在期間は1年だと。


「君、旅人だろう?永住する気はないのかい?」

「はい。まだ、決まってなくて……それに今日来たばかりですし」

「おっと。それは悪い。早すぎたな」

「いえ、お気になさらず」


だめだ。入国初日で「永住」がチラつく。

エルネア王国は本当に良い国だ。この短時間だが、本能がそう言っている。


気を取り直して、情報収集に戻る。


「次は⋯あ!フランキーさん!

「エスメラルダさんじゃないですか。どうかしました?」


ダイゾーさんと別れた後エスメラルダが呼んだのは、赤い服を着た男性だった。


「この人はフランキー・レーンさん。ガルフィン魔銃士会所属の魔銃兵さんよ

「はじめまして」

「はじめまして」


フランキーさんによると、ガルフィン魔銃士会の主な仕事は遺跡にいる魔物の討伐、薬品作りらしい。

武器は魔銃。


「では、わたしはこれで」

「探索に行くんですか?」

「えぇ。それじゃ、フロストさんもまた」

「は、はい。ありがとうございました」


ガルフィン魔銃士会か。良いな。


「次は……いたいた。ウルバーノさん!」

「おう!どうした!」


フランキーさんと別れた後エスメラルダが呼んだのは、ラフな格好をした男性。


「この人はエヴァートン・ウルブァーノさん。ドルム山岳兵団所属の山岳兵団顧問なの!」

「エスメラルダの友だちか?俺はエヴァートン。ウルブァーノ家の顧問で、兵団の長だ」

「ウルブァーノ「家」の顧問?…顧問は他にもいらっしゃるんですか?」


ウルブァーノさんによると、ドルム山岳兵団は他の組織と比べて特殊な組織らしい。

山岳にある山岳兵団の村で6つの名家ごとに暮らしており、それぞれの家に「顧問」「兵長」がいるのだとか。原則、顧問は前兵長、兵長は家の長男(長子)が務めることになっている。ちなみに家の次男は結婚したら一族を抜け、国民になるのだとか。


「重要なのはここからよ!」

「わっ!」


いきなり目の前に来たエスメラルダの真剣顔に驚く。


「兵団の兵長が結婚したら、結婚相手も山岳兵になるの


なるほど。断絶を防ぐための組織内嫁入り婿入り制度か。

その後、ドルム山岳兵団は洞窟内にいる魔物討伐、工芸品(ピザ)作りを主に活動していると聞いた。武器は戦斧。


「それじゃ、エスメラルダ。俺はこれで」

「えぇ。どうもありがとう」

「山岳兵か。特殊だね」

「でしょう?……てことで、武術組織の説明は以上よ。覚えたかしら」

「もちろん。ローゼル近衛騎士隊ガルフィン魔銃士会ドルム山岳兵団でしょ

「凄い!合格よ!えっと、あと農場管理会とかシズニ神殿の神官や巫女さんの仕事もあるけど、滞在期間中に詳しく知れるはずよ」

「分かった。情報ありがとう」


エルネアの武術組織は他国よりも少ない。しかしそれは質が高いからだろう。ダイゾーさんもフランキーさんも、ウルブァーノさんもかなりのベテランさんに見えた。


「エスメラルダ、一緒にハーブ摘みに行かない?」

「あら。エレオノーラちゃん。是非いきましょ。それじゃマリア。また明日ね」

「あ、うん」


その後、わたしはエスメラルダと別れ、疲れを癒しにバシアス浴場に向かった。


ふと、ダイゾーさんから言われた言葉を思い出す。


「君、旅人だろう?永住する気はないのかい?」

「滞在期間……か」


今までもそうだったが、頭のどこにも永住の文字はなかった。


だけどエルネアなら⋯⋯。


いいかもしれない。


そう思うも、わたしは己の考えを否定するように湯に顔を突っ込んだ。


(エルネア王国武術組織・その他組織の人たち)