五島美術館The Gotoh Museumへ 2009.7.14 | emaの気ままにブログ

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心がふんわりほんわか穏やかに一日を送れたら…
さて、何をしてすごしましょうか

関東地方は14日、梅雨明けしたらしい。


気のせいか…


暑いけれども、どこか乾いた暑さになったような気がする。


東急大井町線「上野毛」駅に降り、駅前交差点を渡ると閑静な住宅街へ。

樹木が多く、強い陽射しの中でも通りは爽やかな風が駆け抜けていくようだ。

ゆっくり歩いて10分ほどで五島(ごとう)美術館に到着。


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本日は、五島美術館で開催中の特別展 「茶の湯を彩る食の器 向付(むこうづけ)」 を鑑賞。


五島(ごとう)美術館は東急電鉄株式会社の元会長・五島慶太翁(1882-1959)が収集した古美術品をもとに、国宝級の名品を所蔵する美術館。1960年(昭和35)に開館。

また、お茶会を除いて一般非公開の茶室「古経楼」「富士見亭」を持つ広い庭園を有している。



今回、鑑賞した「向付」とは?


茶の湯でいう「懐石(かいせき)」料理で使用するうつわのこと。

お刺身、生魚などの和え物を盛る器でもあり、その時の料理を示す名称でもある。


茶事では、お菓子を食べて抹茶を飲むということのほかに、客を招いて作法に従い、食事、お酒を飲み、茶をさしあげる「おもてなし」の意味がある。その場合、抹茶を飲む前に、「懐石」とよばれる食事をすることになっている。


つまり、「向付」とは、その懐石で調理を盛り付ける陶磁器の器で、懐石道具の重要なものといえる。

想像してみて…

懐石膳で、左にご飯、右に汁物があり、この2つの椀物の向うに(三角形のように)置かれる器だから「向付」ということになる。OK


*「懐石」という文字を広めたのは幕末の大老井伊直弼の著書『茶の湯一会集』(ちゃのゆいちえしゅう)。それ以前の茶会記には「会席」が使われている。

(「向付の位置づけを考え直す」 田中仙堂  より一部抜粋)



この美術館では、「向付」だけを約100件を一室に展示してある。

茶の湯の器として盛んに使われた桃山時代(16世紀末)から江戸時代(18世紀中頃まで)を、国内の美濃焼、唐津焼、京焼、志野焼など、中国から輸入した古染付・祥瑞(しょんずい)・金襴手(きんらんで)、ヨーロッパの阿蘭陀(おらんだ)など、産地も形もさまざまのものを分類展示している。

私は、この「向付」だけを集めた展覧会に強く興味を持ち、わくわくドキドキ しながら訪ねた。



いつものように…

さらりと紹介だけに留めようと思う。



★黄瀬戸向付(黄瀬戸平茶碗 銘 柳かげ) 

 陶器 桃山時代(16世紀末~17世紀初) 五島美術館蔵

 もとは、揃いの向付を茶碗に転用したもの。外側の胴には唐花文があり、内側の見込みには、桜花折枝文の型を押して、釉薬をほどこしている。江戸時代には茶碗に転用されていたことがわかっている。


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★乾山色絵菊図向付

 陶器 五客  江戸時代(18世紀) 五島美術館

 京焼に新風を吹き込んだ陶工尾形乾山(けんざん)、画家尾形光琳の弟であり、作者。

 8本の白菊をデザインした向付。

 文様に合わせて型を決め、白泥を施した菊花にさび絵の具で縁取りをし、全体に透明釉をかけて本焼をして、その上から緑・黄・余白を金彩で埋める。

 裏には、ブランド名「乾山」銘を入れている。形を自在に変化させる乾山焼らしい作品。

 全く同じものが他に十客伝わる。やや類似しているものが五島美術館と福岡市美術館に五客ずつ伝わる。


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★古染付形替寄向付(こそめつけかたがわりよせむこうつけ)・(中獣六題)

 磁器 六客  明時代(17世紀) 東京・石洞美術館蔵

 

*「古染付」…中国明時代末期頃に日本の茶人の注文によって、景徳鎮民窯で焼かれた染付磁器。


 様々な形の虫、動物を集めて組んだ寄向付。

 全体を型で成形、染付で細部を描く。裏には3、4本の足がついている。


emaの気ままにブログ-向付 古染付


★祥瑞沓形向付(祥瑞沓形茶碗)

 磁器 一客  明時代(17世紀) 個人蔵


*「祥瑞(しょんずい)」…中国明時代末期頃に日本の茶人の注文によって、景徳鎮の民窯で焼かれた染付磁器。独特の細かな幾何学文や花鳥文を組み合わせた染付、鮮やかな発色に特徴があり、「古染付」とは対照的。


 現在、一客だけがはなれているため、茶碗として使用されているが、大正時代まで組物として伝わった向付。


emaの気ままにブログ-向付 祥瑞


★金襴手向付

 萌黄地金彩花鳥鹿文碗(中央)

 萌黄地金彩宝相華文碗(右)

 赤絵鷺文金襴手碗(左)

 磁器 三客  明時代(16世紀) 個人蔵


*「金襴手」…金彩を上絵付した陶磁器。釉薬の上に金箔や金泥で文様を描いて焼き付ける。

織物の金襴に似ているところから連想して付いたといわれる。

景徳鎮民窯で五彩に金彩を施した。


・写真中央の作品は、同じものが揃っていたが、近年に離れたもの。緑の地に鹿や梅、鳥などを金彩で描き、金箔を切って焼き付けている。

・右の作品は、重要文化財の五客揃いと同じ意匠であるが、見込みが無文である。

・左の作品は、鷺と蓮、波濤文を赤で輪郭をとって描き、地の部分を赤く塗りつぶす白抜きの技法で描く。

蓮の葉は緑、地文の赤い部分に金彩を施している。


emaの気ままにブログ-向付 金襴手


写真では伝えられない色彩の美しさではあるけれど…

もっと、もっと、たくさん観てメモしてきたのだけれど…

絵葉書や図録の写真から拝借して、簡単にまとめてみた。


鑑賞を終えるのに2時間が経っていた。

あの一室に長く居座っていたことを、守衛さんが知っている。


外の空気を吸いに、庭へでてみる。

広すぎる。


emaの気ままにブログ-五島美術館 庭園

大井町線の電車が走り去る音が…

右には庭園の外輪を巡るコース


emaの気ままにブログ-五島美術館 庭園

左はお茶室へ続く門が見える。

夕刻に迫りつつあるので、少しだけ左のほうへ歩いていってみた。


次回は庭園をゆっくり歩いてみてもいいかなぁと思いながら引き返す。

さあ、ゆっくり戻ろう

来た道を辿って、流れていく夏の風を感じながら駅へむかう。




特別展 「茶の湯を彩る食の器 向付むこうづけ

 2009.6月27日(土)~7月26日(日)  五島美術館