今年最初の美術鑑賞は、三井記念美術館で開催中の「国宝 雪松図と能面」へ…
所蔵している能面六十面のうち、五十四面がこのほど一括して重要文化財に指定されたことから
これらの能面すべてを展示している。
同じく重要文化財の黒楽茶碗(銘 俊寛 長次郎作)、赤楽茶碗(銘 鵺 樂道入作)、
茶杓(銘 翁 松花堂昭乗作)など能楽にちなんだ関わりのある銘を持った茶道具を展示、
如春庵の茶道具の取り合わせもいっしょに鑑賞できることが何より嬉しい。
★瀬戸肩衝茶入 銘 二人静
作者不明で桃山~江戸時代に作られたものとしか…なで肩のほっそりとしていながら柔和な姿が
とてもよい。
★国宝 雪松図屏風 円山応挙作 (江戸時代)
黒・金泥・紙の白だけで描かれる。写生を基礎に、伝統的装飾画風と融合させた。
この屏風の前に立つと、静寂さがその力強い存在感となって静かに語りかけてくるような気がする。
能面は翁・尉・鬼神・男・女の5種類に分類して新指定の五十四面を観ることができる。
面を「おもて」という。かぶるのではなく「つける」、肉体と一体化することではじめて喜怒哀楽の表情がうまれる。
翁…十世紀には存在したといわれ、能の先行芸能である猿楽の面で、現代の能面の中では最初に出来たもの。
尉(じょう)と姥(うば)…老爺と老婆の意。
★世阿弥作「高砂」で、天下泰平、長寿、夫婦愛などめでたさと繁栄をうたっている。
鬼神…翁の次に誕生したといわれている。般若、大飛出、黒髭、猩々、童子、平太など
男…中将、景清、喝喰(寺に仕える小童)、痩男(幽霊)など
女…小面、孫次郎、泥眼、姥、老女、小尉、痩女(霊界の面)など
★大飛出は天上の雷神、小飛出は神格化された動物や精霊を表現した面で、眼が大きく飛び出している。
★黒髭は水中に住み、雨水をつかさどる竜神の面。
★童子は永遠の命を象徴する神性の面。
★平太は坂上田村麻呂など武将の亡霊を表す面。
★中将(はなまがり)は在原業平、世阿弥作「井筒」で語られる。
★小面は(花)、秀吉が龍右衛門に心酔し、雪・月・花として作らせたといわれる面。清らかな乙女の表情をしている。
★若女(孫次郎)は年頃の艶やかな女の面。「井筒」の女の霊として、永遠の愛を表現している。
★老女は小野小町が年老いた姿といわれる面。気品が漂う。
能面は無表情のように見えて、実はほんの少しの動き、角度から感情表現の豊かさを可能にしている。
この曖昧な表情の奥にある心の機微をさぐる愉しさ、神秘性を忘れずに持ち続けたいと思う。
現代の無表情といわれる日本人の心を読み解く鍵もここから得られるかもしれない…
国宝 雪松図と能面 2008.12.10~2009.1.24
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition_01.html
※参考書 「能にアクセス」井上由理子(淡交社)