日本酒を二つ頼んだら、一升瓶が二本出てきたあたりから記憶に残っている。
僕の右隣にはリアルには知らない後輩男子、向かいには妻、他には、いつもの居酒屋の大将。大将は、なんかちょいワルオヤジみたいな風体で、頭は悪くないのにビッチを装っている中肉中背な中年の女を連れていた。
僕たちは、顔見知りで、仕事をするためのチームでもあって、でも、そのときはとにかくただ酒を飲んでいた。
テーブルの隅に、相席で僕らとは別組の男の二人連れがいた。
話の内容と見た目から、カタギではないことは、なんとなく察しがつく二人だった。
僕の後輩は、仕事だか恋愛だかでチョンボしたらしく、したたかに酔っていて、その二人連れの年上イケメンの方に、酒をこぼしただか足を踏んだだか、とにかく粗相をしてしまった。
年上イケメンは
「おにいちゃん、ちょっと…」と後輩男子を部屋の隅に連れて行って、何やらささやいていた。
後輩男子の表情が、みるみるうちに、年上イケメンを崇拝する顔つきになっていき、何某かの言葉で籠絡されたことがわかった。
後輩男子が戻ってきたので、僕たちは店を出ることにした。
日本酒は、二本合わせて三杯分ほど残っていたが、誰もそれ以上飲む気にならず
「残してってもいいだろう」というちょいワル大将の言葉で、残していくことにしたが、やっぱりもったいなくて、帰り支度をしながら僕がいただいてしまった。
「まだ、飲むの!?」と、夢の中でも妻に叱られながら。
ビッチ風な中年女性は、なぜかガーターベルトにヒールだけのほぼ全裸になって歩き始めたが、誰も何の違和感もなかった。
ビルの一階の薄暗い駐車場を抜け、岩場やドブ川沿いの臭い階段なんかを通って、僕は一人で部屋に戻った。
部屋には、仲間が二人。
間取りは1Kで、入り口から細長い廊下の突き当たりに窓がある。
廊下沿いの奥に引戸があり、そこが台所。
引戸の先は右手に広くなっていて、そこにベッドが二つ。
僕は、二人と憎まれ口を叩き合いながら台所に入ると、入り口の外から電話で話している男の声が聞こえてきた。
「だから、俺は今から仕事をしなきゃならないわけ。
1、2の3!でこの銃を撃ち込んであいつらを片づけるんだ。
なあに、すぐ済む。
ちょっと待ってな。」
声が途切れた。
仲間と打ち合わせる時間はない。
僕は、台所で息を潜めた。
「1、2の3!」で来ると思った仲間たちの裏をかかれ、男は「1!」で撃ち込んできた。
パンパンパンパン!!!という乾いた発砲音が続き、煙が部屋に充満。
血の匂いがして、男が部屋を出ていくのがわかった。
僕は、2回目に備えて台所の引戸を閉めたが、そのとき、寝室との壁部分に大きな鏡があることと、そこに映っている自分の姿に気がついた。
これは入り口からも見えてしまう。
台所に入ってこられたら、僕に逃げ場はない。
しかし、今、引戸を開けたら戻ってくるあいつと鉢合わせになる。
焦った僕の頭の中に、誰かの声がした。
「一か八かのやつは、失敗を認めるのが怖いから手落ちしていそうなところはあえて確認をしたがらなくて後回しにするものだ」
僕は、再びそーっと引戸を開け、窓をめがけて走り出した。
男は戻ってきたが、あえて僕を見ないようにしているかのように、違うところばかり探している。
僕は窓から飛び出すと塀沿いに走り、崖沿いの階段を目指した。
階段の上には門があり、そこさえ抜ければ、森がある。
森の中に逃げ込めば、逃げ切れるチャンスがある。
階段の半ばで振り返ると、窓から男が部屋を出てこっちを見ている。
僕は必死に階段を駆け上がる!
男が追ってくる!
男は、ジブリ映画に出てきそうな小型のバズーカ砲を発射した!
門は目の前!
弾に当たるか、間に合うか!?
僕は、門をめがけて飛んだ…
ところで、体がビクン!てなって、目が覚めました。
心臓がキューンと縮まって苦しかったです。

