大学を卒業して、新卒で小さい会社に入社した。1年と少し働いた。その会社は鉄鋼の卸売業の会社であった。チャーターといって、外部の運送業者の人間が派遣される形で勤めていた。チャーターは配送専門であった。その人は兼業で農家をしてて、一徹な人だった。一月一日生まれであるから、正という名前のいいおっちゃんだった。

小さい会社であるから、社員のほとんどは地元の高卒。この会社は家族経営の会社で、社長が代替わりしたこともあり、大卒をとることにしたようだった。

数少ない大卒の社員であったから、チャーターのおっちゃんからは、学士様と呼ばれてからかわれた。
大学を卒業すればみんな学士だ。大学全入時代と言われて久しいけど、学士なんて偉くもなんともない。
改めて考えると、おっちゃんのからかいのいは時代を感じる。学士に権威があった時代は確かにあったのだ。権威はどこから来るかと言われれば、大学入試という難関試験を突破して、卒業をしたことだ。頭脳に対する尊敬がある。ただ、それだけでは学士様の様はつかないだろう。

学士様に期待されることは社会への貢献だ。大学は真理を探究することを通じて国民を養成するところだ。国民は自分だけのために働かない。国民は自分のために働きつつも、国家や社会のためにも働く。大学を出た頭脳を駆使し、国家や社会のためにはたらき、庶民の利益となることも期待されていた。だから、学士様と呼ばれ尊敬されていたのだろう。

現在の学士が特に尊敬されないのは、学士が増えたからではない。その頭脳を自分自身の安楽のためにしか使わないからだ。