エロの爆弾

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試合を振り返る前に、まずは佐々木則夫監督のエロ の言葉を引用したい。昨年、女子ワールドカップ(W杯)で優勝を果たした後、大会を振り返ってこう言った。

「もしわれわれがグループリーグを1位通過して、準々決勝でドイツとではなくフランスと対戦していたら、優勝はなかったかもしれない」

 この言葉には2つの意味合いがある。1つは、グループ1位通過という結果に安心して無反省のまま決勝トーナメントに入らなくてよかったという意味。もう1つは、大会前にノーマークだったにもかかわらず急激に力をつけていたフランスを、見くびっていたら大変だったという意味だ。

 それから1年。日本のファンには今ひとつ印象が薄かったであろう未知の強豪フランスが、ロンドン五輪を前にベールを脱いだ。7月19日、パリで行われた親善試合、フランス女子代表対なでしこジャパン(日本女子代表)の試合は2-0でフランスが完勝した。

■ 18試合ぶりの完封負け

 フランスは試合開始早々からペースを引き寄せた。ボールの争奪戦の局面ではしっかりと体を当て、なでしこの選手の体勢を崩す。相手がよろけたならば、連続動作ですかさずボールをつつき、味方にボールを渡した。いい形でボールを奪えれば、前線の選手は必ず斜め方向に走り、DFがマークしにくいコースでパスを受けていく。また、両サイドの攻撃的な選手、とりわけ右サイドのMFトミスは、ぶっちぎりの快足を披露して、日本ではスピードを誇るはずの鮫島彩を抜き去っていった。キックオフからわずか10分程度のうちに、トミス、MFネシブ、FWドゥリが決定機を作った。24分には大きなサイドチェンジから、左サイドバックのボンパストルが正確なアーリークロスを上げると、裏に抜けたドゥリがあっという間にゴールを射抜き、フランスが先制した。

 一方なでしこも、大野忍と近賀ゆかりのワンツーや、川澄奈穂美のドリブルから大野のシュート、大野がドリブルで倒されてFKを得るなど、先制される前後からチャンスを作れるようになっていた。

 追い上げが期待されたなでしこジャパンだが、後半28分には「3階からたたき込まれた感じ」(佐々木監督)という、187センチの長身DFルナールにヘディングシュートを決められ、突き放された。結局0-2で試合は終了。なでしこジャパンが無得点で敗れたのは、昨年7月5日のW杯イングランド戦以来、18試合ぶりのことだった。

■ “新しいジダン”を擁するフランス

 ここで、フランスというチームの強さをあらためて紹介したい。2007年に知将ブルーノ・ビニ監督が就任して以来、チームは堅実に成長してきた。昨年のW杯では4位と、チーム歴代最高の好成績を収めた。グループリーグではカナダに4-0で勝利。この大会で4点差がついた試合は、日本対メキシコ戦と合わせ、2試合のみだった。また、ドイツ、イングランド、アメリカ、スウェーデンとも対戦し、イングランド戦のPK勝利以外は敗れたものの、いずれも接戦を演じた。特に目立ったのは圧倒的なシュート数だ。120分間戦ったイングランド戦の33本を筆頭に、これら4試合合計で86本(平均21.5本)ものシュートを相手に浴びせていた。年が明けると、2月に行われた親善大会キプロスカップで、チームとして初の国際タイトルを獲得した。

 フランスサッカーの特徴は、「人もボールも動くサッカー」だ。技術と組織を生かしたスタイルは、なでしこジャパンほどにち密ではないかもしれないが、それでも十分に相手を混乱に陥れる。そのようなサッカーを担う選手たちは、個々が優秀なアスリートだ。体が大きくて、しなやかで、動作が素早い。象徴的なのが、14番をつけてトップ下の位置に君臨したネシブだ。アルジェリアにルーツを持ち、幼少期をマルセイユで過ごした彼女は、10代半ばで国立サッカーアカデミーに入校し、エリートとして育成されてきた。彼女の生い立ちとプレースタイルから、フランス国内ではかつての英雄の姿を重ね、彼女を「ヌーベル・ジダン(新しいジダン)」と呼ぶ。

 そのネシブを筆頭に、高度な運動能力(=フィジカル×技術)を持った選手に高度な戦術を掛け合わせたそのサッカーは、かつての「女子サッカーらしさ」を払しょくしている。なでしこジャパンは女子サッカーを「日本化」して頂点に立ったが、フランスは女子サッカーを「サッカー化」(男子と共有できるサッカー観)する方向に進化した。ビニ監督は指導者として長く女子のカテゴリーに就いているが、FIFA(国際サッカー連盟)公式サイトのインタビューで興味深いコメントを発している。

「わたしは女子サッカーの専門家ではない。サッカーの専門家なんだよ」と。

■ 決して弱点がなかったわけではない

 女子サッカーは、今、大きな転換期を迎えている。かつては力対力、個人対個人で勝負が決まる、大味なサッカーばかりが目立った。そこに技術と組織で対抗したのが日本だ。なでしこジャパンが昨年、世界の頂点に立つと、各国はなでしこのスタイルを称賛し、手本としてそのエッセンスを自国に取り入れようと試みを始めた。そこで、関係者たちは新たな未来を想像した。「もし、大きくて速いアスリートたちが、技術と組織を駆使したサッカーを展開したら、どうなるだろう?」。その答えがフランスなのだ。

 この日の親善試合で、なでしこジャパンはフランスに完敗した。ところが、まったくなすすべがなかったわけでもなく、フランスに弱点がなかったわけでもない。五輪本番で対戦することを想定して、この日に発見できたポイントをいくつか整理しておこう。

 攻守ともに激しくコンタクトしてきたフランスに対し、小柄ななでしこが技術を発揮するには、やはり相手より先回りしてプレーすることが必要だ。ボールの出し手も受け手も、ワンテンポ早い判断が必要だ。

 また、相手が再三繰り出してきた深いタックルに対しては、相手を食いつかせてから、かわして前を空ける技術も有効だ。判断を早く、と言ったことと矛盾するように思われるかもしれないが、判断をギリギリで変更できることも、なでしこジャパンの強みだ。特に相手がスライディングの体勢に入れば、その選手は起き上がるまでプレーに関与できない。つまりパスを見せかけてからのドリブルや、ワンタッチ目で逆方向にボールを置くなどのプレーで、相手のプレッシャーをかわせばチャンスは作れる。川澄、大野、近賀、熊谷紗希などは、この試合中にもその片りんを見せることができた。

 宮間あや主将は試合後、「結果は残念でしたが、悲観することはないと思っています。攻撃のかたちが単調だったり、合わないシーンもありましたが、意識とトレーニングでレベルアップし、初戦までには必ず修正したいと思います」と前向きさを強調した。

 さらに、川澄は試合後、「相手のDFには穴があった」と断言した。「2番(ルナール)は、(カバーリングのために)大きく後ろに下がる。あまりDFラインが整っている感じはしなかった」という。つまり、人とボールが進入できるスペースはある。問題は「そのスペースを誰が使うか」だ。たとえば川澄が意識しているように、最初のアクションでFWがボールを受けた際、ゴール前には大きなスペースが空いている。その時、MFがFWを追い越して前に出れば、決定機は作れるというのが川澄の見解だ。

■ 「未来の女子サッカー」と呼べるハイレベルな戦いに

 守備の面では、MF中央の3人をどうつかまえるかが課題になる。ドゥリとネシブの「縦の2トップ」を、なでしこがラインを上げることによって「横の2トップ」にしてしまうことも、理屈上では可能だ。しかしそれをやりきるには、前線から強いプレスを掛け続けなければならない。DFリーダーの岩清水梓は、「前の選手が(ボールを)追えない時にどうするかは、これからみんなと話し合って確認したい」と、解決に意欲を見せた。

 さらにもうひとつ、0-2の結果を生んだ要因のひとつとして、両チームのコンディションの差も挙げられるだろう。全体的にフランスの選手のほうが、体は動いていた。なでしこは、五輪メンバーが決まった後の国内合宿から練習の強度を上げ、フランス入り後も連日、かなりの負荷をかけて練習をこなしている。一方のフランスは、この試合の前に2日間のオフを設け、ビーチに出かけて心身をリフレッシュしていたという。

 なでしこジャパンはフランスを、ロンドン五輪の準々決勝で対戦するかもしれない相手として警戒してきた。しかしこの日のパフォーマンスを見ると、考えを改める必要があるかもしれない。フランスがアメリカに勝ち、グループGを1位で通過する可能性も十分にある。そうなれば、なでしこジャパンがグループFを1位通過した場合、準々決勝で対戦するのはアメリカということになる。

 五輪本番で、なでしことフランスが再び対戦するならば、互いに自分たちの強みをさらに生かすべく、戦い方を整えて臨むはずだ。互いが互いに刺激され、またタイトルへの強い意欲を見せることによって、さらに好プレーが引き出されるのならば、なでしこジャパン対フランスの試合は、「未来の女子サッカー」と呼べるような、ハイレベルな戦いとなるだろう。