私も先日の『VOICE(毎日放送)』を見て初めて知ったのだが、06年3月には、大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学の村瀬剛医局長らの研究グループが、3次元矯正手術支援システム「3D-DCOT3D based deformity correction and osteotomy template)」を開発、と最初のプレス発表がなされていた。



05年には今回『VOICE』で取り上げられた女の子と同じ、腕を伸ばしたときに肘が内側に曲がった内反肘変形を、世界で初めて回旋骨切りで治療することに成功している。

骨折で折れた骨は、ギプスで固定して自然につながるのを待つのが一般的で、元通りにくっつけば問題ないが、わずかでもずれたり曲がったりすると、痛みや機能障害が残りかねない。

特に、手首からひじまでの前腕は、2本の骨があり複雑な動きをするだけに、腕が曲がったままになったり、手のひらが上や下に向けられなかったりするケースもある。



 こうした場合、エックス線で骨の形状を確認し、余った部分を削り、足りない部分を人工骨で補い、回転させつなぐというような「骨切り」という手術が行われるのだが、その中でも特に、回転させてつなぐ「回旋骨切り」は、勘頼りで難しい。

それをこのシステムを使って、3次元的に骨の矯正シミュレーションをつくり、その通りに手術ができるようにテンプレートも開発。



その「骨切りテンプレート」は、アクリル樹脂製で簡単に作製でき、骨の表面にピッタリはめれば、骨の切断・回転・移動の位置が調整がわかり、その後に外し、骨を金属板で固定すれば、正しく矯正できるという優れもので、前述のような医師の経験や勘に頼る為、治療成績が安定せず、術後に機能障がいが残ることがあった手術でなく、正確な矯正手術が行えるようになり、治療成績の向上の臨床結果を積み上げている。

『VOICE』での中学生の女の子は、子どもの頃に肘の少し上を骨折し、その後手のひらを前に向けて手を伸ばした時に、手が少し外側でなく内側に向くようになり(通常外側に大人で10°・子どもや女性で15°ぐらい開いています)、荷物などを手に持った際に、すぐ肘が脱臼してしまっていましたが、この手術で治るでしょう。

 他にも過去に行って、支障なく生活している臨床検査技師の青年や男の子も紹介されていました。

http://www.mbs.jp/voice/special/201106/02_62.shtml

しかし、当初の発表から5年。

未だにこそのソフトを取り入れた手術を行っているのは阪大だけで、他の整形外科では未だに経験と勘だよりの昔ながらのやり方が行われているのでしょう。

これは、高価であろうこのシステムを取り入れても、「骨切り術」自体に多大な診療報酬は付かず、薄利多売式にそれを専門で行わねば費用を償却できないのだが、骨折後に変形の起こる人は数%程度であることから、パイ自体も望めないということではないでしょうか?

そんな医療提供側の事情とは別に、手や脚に変形が残った患者さんの生活は非常に不自由と予想されます。

民間病院でも採算度外視で症例にあたる事はありますし、公立病院では民間がやりたがらない療法でも行わねばならない場合もあるはずです。

せめて近畿・関東など地方毎にでも1件や2件は、このシステムを取り入れてくれる病院が増えるよう、自治体病院等に要望の波が起こることを期待します。