「きらきら星」と「宇宙戦艦ヤマト」の考察で予告したとおり、


今日は、二つの仮面ライダーのテーマ曲と、さらに「宇宙戦艦ヤマト」の主題歌について


覚書きたいと思います。



初代仮面ライダー。


もしくは、無印仮面ライダー。


あの、血沸き肉躍るブラスのtktkt-tktkt-tktkt-tktkt-
で始まる、「せまるショッカー」


この曲は、EEA-CA-で始まります。


音の骨格は、E-A-


つまり属音から主音


有無を言わさぬ「結論」が、ここで語られるわけです。

♪迫るショッカー 地獄の軍団

ここには、迷いも、夢想も、冒険も無い。

あるのは結論としての「覚悟」「決意」「行動あるのみ」

です。



属音-主音というのは、そういう音形なんだと思います。



仮面ライダーのもう一つの主題歌(僕たちは、「終わりの歌」と呼んでいました)は、
EAA-HC-H-A-で始まります。

♪嵐とともにやってきた 誰だ 誰だ 

ここでも、
「覚悟」「決意」「行動あるのみ」
調が短調であることも手伝って、悲壮感さえただよっています。

そうです。短調における「属音-主音」のモチーフは、「悲壮な覚悟」なのです。



「悲壮な覚悟」と言えば、宇宙戦艦ヤマトです。


♪さらば地球よ 旅立つ船は 宇宙戦艦ヤマト


EEA-AHGA-、これも、骨格はE-A-、属音から主音。まさに「悲壮な覚悟」です。


ちなみに、あの有名なイントロも、

G-GGC-ECD-GG-

と、属音-主音が、調を変えて2回出てきます。

これは長調なので、「前向きな行動」というイメージでしょうか。

それだけに、後に続く「悲壮な覚悟」のテーマが胸に迫ります。



ヤマトは、徹底的にこの「属音-主音」のモチーフを使っており、

♪さらば地球よ

の部分の他に

♪必ずここへ

も、

♪帰ってくると

も、

全部「属音-主音」、「悲壮な覚悟」のモチーフ。

劇伴でも、E,E,A-と流れると、「ああ、また何か重要な決断が迫られるのだな」
と思ったものです。

これを劇中、さんざん聴かされたあとで、「終わりの歌(真赤なスカーフ)」で
主音-属音のモチーフ(「夢想」のモチーフ)が唄われるのですから、
子供心に、「グッ」と来ちゃうわけです。

よく出来てるなぁ、ほんとに。



さて、クラシックで「属音-主音」のモチーフと言うと
チャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番冒頭が有名です。

短調の

ECHA-(ジャン!)

から始まって、長調の

GEDC-E-DF-EHC

と続きます。

これは、両方とも調は違えど「属音-主音」の「覚悟」のモチーフです。


しつこいほど、「悲壮な覚悟」「決断」「行動あるのみ」と
この曲の序章で訴えた後は、あっさりと、その主張をやめて、
あとはもう、タラッタラッタラッタうさぎのダンスのモチーフに走り、
「覚悟」のモチーフに戻ることはありません。

この、なんと言うか、二枚舌な感じが、子供のころは大嫌いだったのですが、

大人になって聞きなおすと、これもチャイコフスキーの
置かれていた立場での、精一杯の感情表現、ある種の抵抗だったのかもしれない、
と思ったりします。

ちなみに、中村紘子さんは、うさぎのダンスのモチーフを
ペダルを一杯に踏んで、わざと不協和音の塊のようにして弾くことがあります。

これは、これで、カッコイイ。

むしろ、こちらにチャイコフスキーの意図があったのかもしれません。




さて、次は、いつになるかわかりませんが、

「属音-三度」というモチーフを考察してみたいと思います。

キーワードは、「運命」「マイウェイ」「ヘイジュード」です。