ボロディンの弦楽四重奏曲第二番
第三楽章(ノクターン)を聞くと、



いつもニジンスキーの指先を思い出します。





油断も妥協もなく、



すべての音が美しい身振りに満ちている。







チェロで奏でられる主旋律は、



一小節目、一拍の休符を置いた主音が歌いだす。

二小節目、装飾音を伴った三連符。

三小節目、打って変わって16分音符が、右手と左手の指を交互に揺らすような身振りで。

四小節目、落ち着きのある四分音符から不安定な8分音符へ。

五小節目、タイの8分音符を聞いて、主張のある8分音符へ。

六小節目、懐かしい装飾音を伴った三連符

七小節目、8分休符を休んで、8分音符でしづしづと歩み、

八小節目、四小節目のエコーを遠くに聞く。









安易な繰り返しも、パターン化された展開もなく、

すべての音符に無駄の無いニジンスキーのような美しい身振りがあります。



このころのロシアが持っている優雅な空気感なのか、

ボロディン個人の育ちのよさなのか、



僕は、この曲を思うだけで、いつもうっとりと夢心地。