幼稚園の頃は、勉強だって、運動だって、図工だって。

全部全部一番で、両親の自慢の娘だったと思う。

 

王子、と呼ばれていた幼稚園で一番人気の男の子は、

わたしのことが大好きだったし、わたしも彼のことが好きだった。

 

バレンタインデーのときは、

お母さんが「エリカのチョコレートだから」と買ってきてくれた

「ショコラティエ・エリカ」のチョコレートをあげて、

ホワイトデーのときは、

わたしの大好きなサンリオキャラクターのキャンディをもらった。

 

なんでも一番のエリカちゃんと王子は、本当にお似合いだったと思う。

 

卒園前のお遊戯会の「シンデレラ」では、

王子様役の王子と舞踏会で踊ったのはわたしで、

かぼちゃの馬車も、ガラスの靴も無かったけれど、

同じようにホコリだらけになることも、継母にいじめられることも無く、

わたしはシンデレラになった。

 

輝かしい幼稚園時代を終えてお受験をして入った小学校では、

自分よりも勉強が出来て、運動が出来て、絵が上手い人がたくさんいて。

なんでも一番のエリカちゃんは、あっという間に落ちこぼれになった。

 

それでも、最初は落ちこぼれの自分に抵抗しようと頑張った。

 

でも、どんなに頑張っても勉強も運動も図工も一番になるどころか、

二番にも三番にもなれなかった。

なれるのは、ビリから二番か、三番。

 

自分の本当の実力を知り、落ちこぼれの自分を受け入れたら、もうあとは早かった。

成績も素行も悪くなり、中学に上がれないかも、高校に上がれないかも、

大学に上がれないかも、と言われながらも、エスカレーター式の恩恵を受けて、

わたしはなんとか大学生になった。

 

小学校受験と中学校受験でしか外部生を受け入れなかったシステムのせいで、

一度落ちこぼれたら二度と蜘蛛の糸を登ることが出来なかった高校までとは違い、

他大学に行けなかった内部生と、そこまで偏差値の高くない外部生が集まる大学で、

わたしは一番に戻ることは出来なかったけれど、

量産型の女子大生の一人にはなることが出来た。

 

全国に何千人、何万人といる量産型の女子大生のわたしは、

普通の毎日を送っていた。

普通に勉強をして、普通にバイトをして、普通に夜遊びをした。

 

夜遊びは大好きだった。

 

夜遊びが大好き、というか、夜の歓楽街をヒールで歩く自分が、

キャッチやナンパを適当にあしらう自分が、オールのあと朝日とともに眠る自分が、

なんだか無敵な気がして、大好きだった。

 

その日も、別にすることもないのにただ夜遊びがしたくて、

缶チューハイとともに「歌舞伎町シネシティ広場」で

女友達のサキとダラダラと喋っていた。

 

「よいしょー!」いつもの友達とのいつもの内容のない会話に、

突然入ってきた男の声。

 

「またナンパか、めんどいな」と思って声のほうをみると、背は小さかったけど、

すごくタイプの、多分、ホストだった。

 

タイプの男と、タイプじゃないけど普通にかっこいい男は、

「俺ら仕事終わったんだけど、ちょっと飲みに行こうよ!」と誘ってきた。

 

キャッチだってナンパだって、一度もまともに話さないままあしらってきたのに、

なぜかその時は、「まあ、暇だし、いっか」と、

人生で初めてのナンパについていくことになった。

 

12時の鐘なんてとっくに鳴り止んだ、2時過ぎだった。