リモコンの電池を替える。





日常のこんな一コマさえも

彼を思い出すきっかけになる。






時計の針が遅れるといつも

せっせと電池を替えていたのが彼だった。






よく細かいことに気づくマメな人だった。

私がズボラだったから

余計に彼の几帳面さが際立っていた。






凸凹な二人。







凸凹コンビって一見、

全然違うもののように思えるけど

ある意味似ているんですよね。

不器用同士でどっちも意地っ張りで頑固で。

そして、弱虫で。





そんなふたりがうまく合わさって

ひとつの形になる。





彼と居るととても居心地が良かった。

無言さえも苦痛じゃなかった。

一分一秒が愛おしい時間だった。

お互いに無いものを補って

どちらかが傷つけば

その傷を癒し癒されながら生きてきた。








彼が居ないと私は成り立たない。

この深い傷は彼にしか癒せない。







分かりきってることなのに

彼は何故そんなに死に急いだのか...








私がこんなにも悲しく苦しいってことは

貴方も同じ気持ちでいるってこと。

それを痛いほど分かってて

私も彼を癒してあげることはもうできない。






“電池を替える”






そんな単純な作業だけで

私をこんなにも苦しめるなんて...







あとどれだけ

この苦しみを味わってゆかねばならないのか。








どこまで貴方は

私の心を奪えば気が済むんだろう...