~ユノside~
「…来ると思った。…ほら?入れ?」
玄関の鍵をカチャリ、開けながら、アルコープにしゃがみこんだそいつの腕を引っ張り上げる。
半分寝かかっていたのか、うつろな目を擦りながら俺に体重を預けるチャンミン。
「ん、…、遅いんだよ。…寝ちゃうとこだったじゃんか。」
「おまえさ、…合い鍵でエントランス抜けてくるんだろ?そのまま、部屋入って寝てればいいのに。」
俺に寄りかかりながら、…ふぁ~、と大きな欠伸。
「…そんな訳いくかよ?別に恋人でも、…もう居候でもないのにさ。」
チャンミンが連れてきた、モデル兼フリーターって女の子が、あからさまに俺を誘い初めて。
チラッと隣のチャンミンに視線をなげたら。
くいっ、と肩を竦めて、…お好きにどうぞ?って感じ。
まぁ。
チャンミンの許しがなくても、勝手にいただいちゃうけどな?
甘い視線をその子に向けて、スーッとキレイな髪を梳いてみたり。
一応、目の前の彼氏に遠慮してるのか、頬を染めて、ためらいがちに身体をひいた。
「…ふふ。……可愛いな。」
その指が染まった頬におりたところで。
ガタッと席を立ったチャンミン。
「もう、帰る。…お二人はごゆっくりどうぞ?」
バッグを手に取り。
「…ここは、ユノの奢りね。じゃあ。」
クルッと背を向けて店から出て行った。
─────そうなると、もう目の前の女の子にまったく興味は無くて。
「……ねぇ?この後、一緒できる?」
急に目をトロンとさせて誘ってくるけど。
「んー、…残念。これから、仕事なんだ。……またね?」
─────また、…は、多分ないけど。
そんな日は、できる限り仕事を早めにあがって急いで帰る。
エレベーターを降りて真っ直ぐ、一番奥の俺の部屋、アルコープの柵の間から見え隠れするチャンミンの姿に。
なぜだかいつも、キュンと胸が痛くなり、さらに足早になる自分が少しだけ情けないけど。
「ねぇ、…もう彼女のこと、…抱いちゃった?」
擦ったから、少しだけ充血した目でジッと見てくる。
「ん?…今日は仕事あったからさ。───いいの?抱いちゃっても?」
ドサッとソファーに倒れこんで、………本当に眠そう。
「べつに、勝手にすれば?ほっんと、ユノって嫌なやつ。」
ソファーに横たえた身体の上からそっと覆い被さって、クチュ、…耳朶にキスをおとす。
「…じゃあ、俺に会わせなきゃいいだろ?」
くすぐったそうに捩る顔を両手で押さえて、耳のあたりを念入りに、…頬から顎のラインに舌を這わせば。
「ん、…っっ、…いんだよ、…浮気しないか、…試してんだから。」
上気した頬に目元もトロンと惚けてきて。
「…ふっ。今のところ、百発百中で浮気されてんね?」
首筋から、鎖骨、…外したシャツの隙間に何度もキスしたら。
「……う、…うるさいっ!」
言葉とは裏腹に、…やっと腕が俺の背中にまわって。
ギュッとしがみつかれたら、───もう。
なにも考えられず、チャンミンを喰いつくす勢いで抱くことしか出来なくて──。