6/9
ロヴァニエミに到着するはずの今日だったが、ヨウニさんがウコンキビ島へ連れていくというので、移動を明日に延期した。ロヴァニエミでお世話になる方に実は数回日程変更をさせてもらっていて、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
小雨がぱらつく中、いつものハーバーから船を出す。だんだん島の位置関係が分かってくるようになり、ウコンキビの姿も遠くからすぐに見つけることができた。このウコンキビという島はイナリから11kmのところにあり、昔からサーミの人たちの神聖な場所として崇められてきた。島には洞窟があり、そこで生贄が捧げられていたことがわかっている。ウコンキビのUkkoとは「おじさん」というようなニュアンスのサーミ語。
島に着くと、ヨウニさんは特別に私が見たかったサーミの民族衣装のラヒンプフに着替えてくれた。いつもの陽気なヨウニさんが、まったく違った雰囲気をまとう。そこに立っているヨウニさんと私の間には、どうやっても超えるこのできない、隔たりのようなものがあり、自分とは人間の性質そのものが違うのだと見せつけられたようだった。それは私が民族というものを肌で感じた瞬間でもあり、彼がサーミであると確信した瞬間でもあった。彼は一層彼らしくそこに立っている。
ヨウニさんが高校へ進学する頃、サーミ語を話すことは厳しく禁じられ、民族衣装を着ることも許されなくなった。現在、サーミの存在は認められ、南フィンランド人からは尊敬の眼差しさえ持たれている。このラヒンプフは、結婚式や葬式、サーミの代表として国に意見を献上する時などに着用される。同じ民族同士で、喜びや悲しみを共有するためのものであり、先祖から受け継いできた血統を証明する、衣装という単語では補いきれない意味を持っている。
ウコンキビの対岸にある、Hautuumaasaariハウトゥマサーリという島を訪れた。蚊柱がそこら中に立って、口を開けば入ってきそうなほど。この島全体は墓場になっていて、ヨウニさんの親戚もここに眠っているという。何とも独特な雰囲気だが、不気味な感じなどはない。
ヨウニさんは地面に座り込んで、しばらく何かを考えているようだった。何を思っているか知りたかったが、それは聞くことでないような気がして、心にしまっておいた。小雨が降り出して、私たちはボートで再び家へ帰る。
⭐︎今日のご飯⭐︎