友人の 右からアレクセイ、バトゥ、カーチャ


6/23/15

 

 ここ最近サンクトの街は白い綿が宙に飛び回っている。初めはハトの羽かと思っていたが、それがたんぽぽの綿毛ということが最近わかった。

 先週末の土曜日は、高校生の卒業パーティーが街中で行われた。友人のウクライナ人、アレクセイとカーチャ、トルコ人のバトゥと夜中からそのお祭り騒ぎを見に出かけた。花火が上がったり、ネバ川に真っ赤な帆の船が現れたりと卒業記念とは思えない大掛かりな祝祭だった。なにより街全体がディズニーランドみたいなサンクトは夜になると建物がライトアップされ、さらに魅力的だった。

 ウクライナ人の友人は、今戦争が行われているドネツク出身。街にいられなくなったため、ここで建築士として働いている。彼らの生活や家族の話を聞くと、悲しくなってしまうが、彼ら自身が前向きであることが唯一の希望であるように感じる。

 だんだん生活にも慣れてきて、授業が終わると、同じ学校に通っているトルコ人のバトゥと一緒に博物館へ行ったり、野暮用を済ませたりしている。彼は私の知っている大雑把で自由奔放なトルコ人とは違って、よく気を遣うし、礼儀正しい。彼はレベルの高いクラスにいるので、ロシア語で話をするととても勉強になる。

 今日はロシア料理、ブリーニをランチで食べた後、ユスポフ宮殿へ向かった。朝は雨が降っていたのに、午後には真夏のような暑さ。ロシアは寒いと漠然と思っている人が多いと思うが、少なくとも8月のサンクトは日本と同じくらい蒸し熱い上に、エアコンがないので窓を開けるしかない。するとネバ川から派生する大量の蚊が入っている。私がここへ初めて来た夏は、ロシアのイメージをことごとく覆された。

 話がそれた。
私たちが宮殿の前に着くも、入り口が閉まっていたので、目的地を変えてロシア博物館へ行くことにした。しかし、これまたロシア博物館の入り口の前まで来るも、火曜は休みと書かれている。うんざりしているのは私たちの横には、同じ境遇にあった2人のロシア人のおばさまがいた。

「今日はどこの博物館も休館みたいよ」
「さっきもユスポフ宮殿へ行ったら閉まってました」
「そこは2カ所あるの知ってる?」

 地図で確認すると確かに2カ所ユスポフ宮殿という名前の場所が存在し、私たちは違う方へ行っていたことがわかった。
「一緒に行きましょう」
 このおばさまたちが宮殿へ連れて行ってくれることになった。ロシアに住めば分かると思うが、彼らは非常に親切。分からなければとにかく誰でも隣の人に聞けば必ず助けてくれる。私の感覚では、あるところでキューバ人に似ているなと思う。


      宮殿を案内してくれたロシア人のおばさまたち


 疲れを知らない老婆たちの後ろを、足が痛いだのなんだの言いながら、私たち若者が追いかける。宮殿まで来ると、チケット売り場は長蛇の列。聞けば売り子のおばちゃんは休憩に出ているという。
 驚く私たちに彼女たちは、「あら、ロシアでは普通のことよ。こうやって待っている間も知らない人と話たりできるからそれも楽しいじゃない。いずれ休憩から戻ってくるわよ。ほら、あなたたちのこともっと聞かせてちょうだい」とケラケラ笑う。少し忘れかけていた今を楽しむラテンの感覚を、私は思い出していた。



                ユスポフ宮殿の中の劇場


 ユスポフ宮殿は、帝政ロシアの名門貴族ユスポフ家の邸宅で、サンクトで最も美しい宮殿のひとつ。修道僧のグリゴリー・ラスプーチンが暗殺された場所としても知られている。ロシアの宮殿や美術館は本当に豪華で贅沢。ロシア人の女性が派手なのは、こういった環境にいるからなのだろう。ここを訪れてしまうと、他のヨーロッパの国のお城などがなんとも小さく、可愛らしく見えてしまう。


 宮殿を出るとすっかり疲れてしまった私たちをよそに、「さあ、次はどこに行こうかしら?」とメモを取り出すおばさまたち。私たちは宿題もあるので、お礼を言って帰路に着いた。明日はロシア博物館へ行くと話していたからまた会えるかもしれない。

 

 家に戻ると、近所の高校生が遊びに来て、髪のアレンジの練習をしている。この家にはいつも近所の人たちが出入りしていて、朝も夜も玄関の扉が閉まっているのを見たことがない。そう言ったところも、ここがキューバと似ていると思ってしまうことのひとつだ。


⭐︎今日のご飯⭐︎


ロシア料理 ブリーニ 中身はチーズやハム、マッシュルームやイクラなど色々種類がある

ERIKO