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                  サンタとアベルと

 ロヴァニエミ最後の日。忙しいたくみさんに変わって、彼女の友達のカメルーン人、アベルさんがサンタ村へ連れて行ってくれた。たくみさんとはほんの2日の間だったが、深い縁を感じたし別れの時に不思議と涙が出なかった。それはどこかでまた会える確信のようなものを感じたからかもしれない。

 サンタ村はその名の通り、サンタクロースがいる村。世界中からたくさんの人たちがサンタに会いにやってくる。
 サンタクロースの起源は、小アジア(現トルコ)のミュラ司教であった聖ニコライだったと言われている。貧しい人や困っている人に尽くした人で、ある日彼は近所に住んでいた家族がとても
貧しい生活を送っていることを知り、ニコラスはその夜にその家の煙突から金貨を投げ入れた。するとその金貨はちょうど暖炉の側に干してあった靴下の中に入り、そのお金で一家は救われたという話がある。ニコライの死後、彼は聖人となり、聖ニコライ祭が始まり、子供達へプレゼントを贈るようになったと言われている。

 サンタ村はテーマパークのようになっており、建物ごとにお土産屋さんや、レストラン、サンタのいる家や郵便局などに分かれている。
 対面したサンタは、本当によく勉強してるなー、という印象だった。サンタの姿が入り口から見えた時、その大きさにちょっと怖くなって部屋に入るのを躊躇していた私に日本語のギャグで和ませてくれた。日本語でスラスラと基本会話が出てくるし、友達がカメルーン人だと分かるとフランス語で挨拶をする。さすが世界中にプレゼントを配りに行っているだけある。とにかくプロフェッショナルな対応でとても勉強になった。
 村の郵便局からはクリスマスに到着するハガキが送れるようになっていて、何枚か書いて出してみた。その様子は後日
youtubeで。


                      北極線


 この村の中には、北極線が通っている。この線に位置している都市は世界でロヴァニエミだけである。
「あと
10日くらいしたら『夜のない夜』が始まるからもっといればいいのに」
北極圏はこの時期になると夜でも太陽が出ている日々が続く。これをフィンランド語で
Yoton yoウォトン・ウォ(夜のない夜)と呼ぶ。これは空気が白む白夜とも違う。この間に太陽はさまざまな美しい姿を見せてくれるのだそうだ。

 この街を歩くと、本当に世界からさまざまな人種の人々が住んでいるなと思う。外から来た人間にとっては少なからず厳しい自然環境の中で、どうして居続けたいのか、私にとって不思議だった。
 “
Lap Fever”という言葉がある。直訳するとラップランド病とでもいおうか。いわゆるこの土地の1年を通して出会う自然に取り憑かれてしまう人々のことだ。私にとってラップランドという場所は、興味が向く先の扉をゆっくりと少しずつ開いて、素敵なものを見せてくれるような場所だった。

 アベルさんに見送られ、サンタクロースオフィシャル空港であるロヴェニエミから、初日にやってきたヘルシンキへ舞い戻った。


            ロヴァニエミ 飛行機の窓から

ERIKO