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ローパーネンさんの家は、ヨーエンスの町から車で30分南にあるティッカラという場所にある。家の周りは森、湖、森、湖、森。2人暮らしで、主人のアールトさんは定年退職をされているが、奥さんのスィルッカさんは、音楽学校の校長先生をされていて、平日は毎日学校へ出かけている。私の一週間の滞在プログラムを時間刻みでスケジュールしてくれていた。そういえばヘルシンキの家族も私の滞在スケジュールを分刻みで作ってくれていたっけ。フィンランド人は日本人よりも細いのか。
アールトさんとスィルッカさんは穏やかな海のような人だ。優しく、静かで、色んな恵みを内包している。私はさっそく彼らの子供になったような気分になった。家に着くなり、家に付いているサウナを炊いてくれた。だんだん長い時間サウナに入れるようになっていて、なんだか嬉しい。
今日はヨーエンスから100km離れたKoli(コリ)という場所にある国立公園へトレッキングに出かけた。彼らは森の中を歩くのが大好きだという。コリはフィンランド人みんなが憧れる、一生に一度行ってみたい場所。世界三大叙事詩「カレワラ」の舞台となった場所でもあり、作曲家のシベリウスや芸術家たちが多くの時間が過ごし、創造を膨らませた土地でもある。
コリへ向かう車内で、彼らが日本を旅した時の話になった。「東京から京都まで早い電車に乗って行った時、自然が見られると思ったけど、家ばかりだったわ。それを見て、本当にたくさんの人が住んでいるのだと思った」
フィンランドの人口は500万人、人々は高すぎる目標を掲げず、自分ができる範囲で自然を愛でながら、素朴に豊かに生活している。日本での生活スピードと時間効率を求める暮らしを今、私自身違和感を感じ始めている。
フィンランドの人は、露店やレストランで順番を待つことに全くイライラしない。いくら長い列ができていても、店主とのたわいもない会話を楽しむ。自分たちは何も急いでないと言う。私はこの心の余裕はとても大切なことだと感じる。それは、森をゆっくりと歩くことにも通じている。そんな時間を持つことの心の余裕が彼らにはある。
国立公園の7.2kmのコースを4時間かけて歩く。途中、火を起こしてソーセージを焼いて食べたり、淡い緑色のトナカイ草が生い茂る丘でコーヒーを飲んだりしながら歩いた。赤ちゃんをおぶってトレッキングする姿と何度もすれ違いながら、久しぶりに踏みしめる土の柔らかい感触が体に鈍く伝わっていく。いい汗を流した、自宅でのサウナは格別だ。
ERIKO
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