5/11
夜11時に就寝、朝8時頃に目が覚める。ボリビアで死に際の人々を訪ねながら、自分の生について考えるバスツアーに参加するという奇妙な夢を見た。結局私は最後までいることができずバスを降りたが、バスに残った仲間たちを見て、降りた自分にとても後悔していた。あんな感情は今まで味わったことがない。一体何だったのだろうか。
今日はヤリさんが仕事へ出かけたので、家でアンネさんと今後私が滞在する場所への航空チケットを買ったりした。意外と交通の便が一筋縄ではいかないフィンランド。そのことはまた後日書くとしよう。
午後になるとヤリさんが会社のスタッフと仕事から戻ってきてチーズを食べながら団欒した。ヤリさんの会社で働くジョナサンはイスラエル人。とっても歌が上手で、アンネさんのピアノと一緒にギターを弾きながらヘブライ語の歌を聴かせてくれた。彼は18才で国を出てフィンランドで働いているが、今年自国へ帰るのだと言う。フィンランドは整頓されていて、美しく、きちんとしているが、人間関係にも緩さがないのが寂しいのだと言う。彼の歌声は切なく美しかった。
夕方、ヤリさんの実家を訪ねた。ヤリさんのお父さんの話は以前から聞いていて、会えるのを楽しみにしていた。私がしている定住旅行は、人の家を訪問出来ることが何より楽しい。
まっすぐ天に向かって伸びる背の高い木が目の前にある家は、林に囲まれ、隣には娘さん夫婦が暮らしている。ヤリさんのお父さんクオスティさんとお母さんのテルットゥさんが出迎えてくれた。フィンランド人は挨拶する時にキスをしない。他の北欧の国はどうなのだろうか。クオスティさんが挨拶の時に差し出した手は私がこれまで会った人の中で一番大きくて分厚く、まるで熊のよう。靴を入り口で脱いで中へ通してもらう。椅子、テーブル、ランプ、天井、フィンランドの家具は細いデザインでいちいち可愛らしい。
サウナで生まれたというクオスティさんは秋になると猟へ出かけるハンターだ。地下に管理している狩猟銃やサウナを見せてくれた。私が物珍しそうに彼の手を眺めたり、触ったりするのをまるで小動物を優しく眺めるかのような視線で見つめる。彼の人生はこの手で生きるための生き物を捕らえ、様々なものに触れてきたのだと思うと、それは人生が刻まれた作品のように思えた。