5/13

 カトマンズの日中気温は30度を越える。それに加え、1日のうち12時間は大体停電するので、エアコンも使えない。山の寒い気温から、暑い気候に身体がついていけなかったのが、とうとう体調を壊してしまった。
 発熱と腹痛で大したことはないが、昨日本当は、米子で会った山根さんのクリニックを訪問する予定だったのに、それが実現できなくなって大変残念である。

 そんなわけで昨日はお昼約束していた方と家の近くのレストランで会って、それ以外は家で療養していた。夕方には、ラジオでお世話になった明美さんが、お子さん
2人と一緒に家に遊びに来てくれて、とっても綺麗なクルタまでプレゼントしてくれた。そんなカトマンズ最終日だった。

 ガジェンドラさん一家は、私の体調をとても心配してくれて、医者に電話をかけたり、薬を調達してくれたり、今朝の出発の前には、お医者さんの弟さんを呼んでくれて診察までしてもらった。いつでも親身なガジェンドラさん一家には、本当にお世話になった。次は、米子で会えるのを楽しみにしている。

 ネパールでは、シェルパ族のソナム一家と、ガジェンドラさん一家の家に滞在させてもらった。とても同じ国とは思えない両者の生活環境で、彼らの生きる営みに触れた。自然と同居しながら生きる者、人という繋がりを上手く活用しながら都会に生きる者。そのどの生き方にも懸命さと生きるための努力が含まれている。それは何より美しい。

作家の灰原健次郎さんがこんなことを言っている。

あなたの知らない所にいろいろな人生がある。あなたの人生がかけがえないように、あなたの知らない人生もまたかけがえない。人を愛することは、知らない人生を知ることだ」

 ここネパールで、私の知らなかった人々の人生に触れられたこと、それはこれから私が見る様々な景色に、豊かさと想像力を与えてくれるだろう。

 カトマンズの空港で使わなかったルピーをドルに変えると、渡された紙幣のほとんどが出来の悪い偽札だった。ちゃんとした銀行だったのに、たまたまだったんだろうか。
「これ、偽札ですよ」受付のお姉さんに言うと、笑いながら本物の紙幣に変えてくれた。わざとかどうか分からないが、気づいて良かった。

 無事に出国し、今私はトランジットでマレーシアのクアランプールにいる。明日のお昼には日本に着いているだろう。ネパールの旅は終わりに近づいている。


             ガジェンドラさんファミリー

ERIKO