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 昨晩夜中の12時頃、突然私の部屋のドアがボーンと開いた。驚いて飛び起きて、ライトで外をチェックしたが誰もいないようだった。一体何だったのだろう。昨日、たくさんの墓場を通過した時にお化けが付いて来てしまったのか。でも、そのような雰囲気は一つもしなかった。

 朝目が覚めると、ひどい頭痛。寝る前に被っていたフードが脱げ、頭だけ-
10以下の気温にさらされていたのだ。今日はエベレストBCへ行って、ロブチェまで下山しなければならないのに、困ったものだ。




                                                          エベレストBC


 朝食を食べ終わって、BCへ向かって歩き出しても、頭は脈を打つのを感じるほどガンガンする。それでもなんとなく、なんとかなる気がして前に進む。岩山を登ったり降りたりを繰り返しながら、2時間。黄色いテントが点在している、エベレストBCに到着した。

 ヘリコプターがひっきりなしに行き来している。先日起った雪崩で、エベレストへの行路が断たれ、予定していた多くの登山隊は撤収作業にかかっていた。

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度目のエベレスト登頂を目指していた、サラリーマン登山家の大山さんのキャンプを探したが、残念ながら見つからなかった。BCのキャンプ地は予想以上に広範囲で、この5,360mの標高で長時間人探しなどすれば、体力がすぐに消耗してしまう。






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時間ほど散策して、下山することにした。帰り際、義足の登山家とすれ違った。ヒマラヤの圧倒的な景色が、何かを感じたり考えたりする時間など与えてはくれず、私はまた新しい景色に目を奪われてしまった。



             BCのシェルパ達 カッコイイ!!


 頭痛は少しずつよくなっていったが、私の顔はパンパンに浮腫み、疲れが出始めている。ゴラクシェップまで戻り、昼食を取って、これまで同じ行程を歩いて来たロシア人達に別れを告げて、再びロブチェへ向かった。

 標高の高い場所にいる時は、なるべくたくさんの水分を取らなければならないが、高山のロッジで売っている水は、
1ℓ=200円と、とてつもない金額がする。私は最近もっぱら、ロッジの生水を飲んでいるが、ゴラクシェップの水は、泥が混じっていて、茶色に濁っている。それをいくら飲んでもお腹を壊さないのだから、私の胃は一体どれほど丈夫になっているのだろう。安上がりでありがたい限り。

 ロブチェまでの道は昨日歩いたはずなのに、随分前に通ったような気さえする。ヒマヤラに来てから感じるのは、1日の長さである。子供の頃、いくら遊んでも時間が余っていたような気がしていた、あの感覚を私は今、ここで感じている。

 太陽が雲に隠れると、冷たい風が容赦なく吹き付ける。今日は8時間歩き続けた。夜ご飯は、ラクパさんが特性のお粥を作ってくれた。

ERIKO